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【対談】長沢碧さん×銀座もとじ『ぎゃらりー泉 型絵染 長沢碧 初個展~瞳の奥に描かれた景色~』に向けて

写真左より、店主 泉二弘明、長沢碧さん、銀座もとじ文化企画デザイン室 續

【対談】 長沢碧さん×銀座もとじ
『ぎゃらりー泉 型絵染 長沢碧 初個展
~瞳の奥に描かれた景色~』に向けて

菊の香りが漂う季節となり、銀座の街にも着物姿の方々が増えました。
「そろそろ、また着物を着てみようかしら」、そう思われているお客様も多いのではないでしょうか。
間もなく、ぎゃらりー泉にて、長沢碧さんの初個展を開催いたします。
純粋な心、瑞々しい感性が解き放たれた、着物と帯。
初個展を迎えるにあたり、長沢碧さんに今のご心境をお聞きいたしました。

「初入選の作品を着てまいりました」

弊社文化企画デザイン室 續(以下 續):
長沢さん、大変お待たせいたしました。
当初の予定が2年延期となり、ようやく初個展を開催できますことを心から御礼申し上げます。

長沢碧さん(以下 長沢):
開催して下さってありがとうございます。
待ち遠しいような気持ちと準備を整えるのとで、あっという間の2年でした。
着物は組み合わせ次第で何倍も素敵になるので、銀座もとじさんのお力で最高の状態でお客様にお披露目できることを大変嬉しく思います。

續:
ぎゃらりー泉の扉が開き、碧さんのお着物姿、その美しさに目を奪われました。
今日の御召し物、とてもお似合いです。本当に素敵。

型絵染 長沢碧 初入選作「陽の道」

長沢:
ありがとうございます。
この着物は、2017年に第51回 日本伝統工芸染織展に入選した作品「陽の道」です。
山に広がる木々の紅葉の情景を型絵染で表現しました。紅葉は陽のあたる場所から黄色や赤色に染まっていきます。山に現れる色の帯は陽の通る道筋を教えてくれるように感じました。
帯は北村武資先生の帯を締めさせていただきました。

續:
そうでしたか。北村先生の帯が風や流水、時の滴のようで、装いに臨場感が生まれますね。
碧さんの思いが作品になるまでのお話をお聞きできますと、見え方も変わりますし、自分の心の記憶をたぐり寄せながら想像できるので、やわらかな気持ちになれます。
作品一覧のページでは、今回ご紹介させていただく作品への創作の真意と言いましょうか、小さな物語を添えてありますので、是非、ご覧いただければと思います。

長沢碧作 型絵染訪問着 宝珠
長沢碧作 訪問着「宝珠」。植物を通して見える光と風の情景を表現。北村武資先生の羅の帯作品に感動し、流れるような造形美を目指したという。

2人の人間国宝の先生の工房を訪ね、体当たりの質問

長沢:
續さん、私が「陽の道」を自分自身で着用することに決めた経緯をお話しさせてください。
2018年、3月に金沢から東京の実家に帰ってきました。翌月の4月、泉二社長様が京都の福田喜重先生と北村武資先生の工房へ連れて行ってくださいました。
社長様のお蔭で作品も何点か見ていただけることになり、いろいろお話を伺った中で勇気を出して、「この着物は売れるでしょうか?」と、お聞きしました。

「初めて入選した作品は大事にとっておきなさい。」と、両先生から同じお言葉をいただきました。自分にとって作品を大事にする一番の方法は、自分が着ること、そう思い仕立てました。
その時に恐れ多くも北村先生に、「このお着物にはどのような帯が合いますでしょうか」と、お尋ねしましたら、先生が3、4本の帯をお持ちくださり、大変勉強になりました。
その後、御店にてこの帯を購入させていただきました。

續:
そうでしたか。 初めてお聞きしました。存じ上げず、失礼いたしました。
福田先生や北村先生に単刀直入にお聞きになられるとは、なんと勇ましい。
傍にいた店主は冷や汗をかいていたのではないでしょうか(笑)
碧さんの必死さを両先生が受けとめてくださり、本当にありがたいことですね。
北村先生、直伝のコーディネート、羨ましいです!
お着物と先生の帯が共鳴し合い、生き生きとしていてお美しいです。

大学で染織の道へ進み、導かれて金沢の工房へ

型絵染 長沢碧さん

續:
碧さんは幼少の頃から果敢なお子さんだったのかしら?

長沢:
幼稚園の頃に文京区に住んでいまして、確か児童館というところで工作とか沢山できるところがありました。ものづくりは好きだったような気がします。
なかなか帰ってこなくていつも怒られていたようです。

續:
そうでしたか。女子美術大学芸術学部工芸学科をご卒業後、大学院修士課程を修了されましたが、当初から染織を希望されていたのでしょうか。

長沢:
女子美術大学には中学校から在籍していたので、ぼんやりとでしたが、誰かに使っていただけるものが良いと思い工芸科を選びました。
私が入学した頃は陶芸、ガラス、染、織を1年で触れ、2年でコース選択をしました。
履修する前はガラスに興味を惹かれましたが、実際にしてみて染めが一番あっていたような感覚で決めたような覚えがあります。

續:
その後に金沢卯辰工芸工房入所されましたね、なぜ金沢だったのでしょうか?
作品の中にも金沢にまつわる帯がありますね。


兼六園の梅をモチーフに制作した九寸名古屋帯「春」
2017年 第73回金沢市工芸展 入選作

長沢:
お恥ずかしい話、修了制作で精一杯で就職活動を全然できておらず、見かねた大学の荒先生が3年生の研修旅行で金沢卯辰山工芸工房を見学する時に誘ってくださいました。
修士2年だったのですが3年生に混ぜてもらって見学に行きました。
工房の染め定員5人で丁度、翌年2枠空くのでチャンスだと。大学の山本先生と荒先生がすごく応援してくださって、試験に受かったのは8割以上先生方のお蔭と言っても過言ではないです。

續:
そうでしたか。導かれた道、恩師の先生方に感謝いたします。
金沢というと日本が誇る加賀友禅がありますが、工房では主にどのようなお仕事に従事されていたのでしょうか。

長沢:
9時から5時まで工房で制作風景を見せるのが仕事というか。
基本的には自分の制作研究していました。ガラス越しに制作風景が見えるようになっていました。後は前期後期の制作発表、一ヶ月に一回、染織を講義や実技で学んで、工房祭などで金沢市民の皆様に向けてのワークショップを年2回、お茶会を年1回開催していたと思います。お茶やお花、書道も月1で金沢の先生が教えに来て下さいました。結構、記憶が曖昧ですね。
制作、学び、工房行事で回っていました。仕事というより学ぶ、工芸や芸術全体の底上げを金沢市がバックアップして下さっているという感じです。
21世紀美術館をはじめ、他にはない文化的な都市だと感じました。
私が修了後、工房はリニューアルしたのでまた色々変わっていると思いますが。


図案を描いて型紙を作り、一色ずつ染め重ねる

續:
現在、碧さんは染めの中でも型染の技法で作品を制作されていますね。
何が切っ掛けでしたか?

長沢:
女子美術大学の染めは過去に芹沢銈介先生が教鞭をとられており、その系譜で沢山良いものを見たからでしょうか。授業で一通り様々な技法をやって卒業制作を型絵染の技法で行こうと決めた時から奥が深くてその魅力にはまってしまったと思います。
大学では型絵染は芹沢銈介先生のブランド名みたいなものなので、型染としか分類してなかったような気がします。

「国画会」と「日本工芸会」の両方に出品する理由


2015年 第89回国展 入選作 長沢碧作 訪問着「うららかな春-早春-」

續:
碧さんは国画会と日本工芸会、両方の公募展に出品されておられますが、ご自身の中で望まれていることがあるのでしょうか。

長沢:
国画会は女子美術大学の先生方も多く出品していたので在学中から挑戦していました。日本工芸会は金沢に行ってから一般の人でも出せると聞いて挑戦してみました。
私、正直に申し上げます。今を生きている素晴しい作家の方々に一人でも多くお会いしたかったのです。個人で突撃するには勇気が足りないけれど、可能であればお話ししたい 実は両会とも作品講評してくださり、凄い勉強になります。
入選できれば作品も展示され、皆様からご助言をいただくこともできます。

續:
そうだったのですね。国画会は創造力が豊かな若手の型絵染作家さんも多いですし。

長沢:
はい!若手の方がいると勝手に仲間意識を抱いて勇気付けられています。
制作環境とか湿度とか技法とかいろいろお話できて勉強になります。

コロナ禍で実感した人との繋がりの大切さ

續:
弊社では、初めて個展催事をさせていただく作家の皆さんにお願いしていることがあります。遠方の方でも機会があれば店舗にいらしていただき店内の雰囲気、お客様の装い、お客様と販売員との会話の様子、トーク会にもご参加いただき、感覚を掴んでいただくようにしています。
コロナ禍での一年半、安心・安全を第一に限られた貴重な機会を通して、どのようことを感じられましたか。

長沢:
お召しになる方々の数だけ美しい組み合わせがあると気づかされました。
作家の方々の本物を作ろうという熱意、銀座もとじさんの人と人をつなぎ合わせる細やかな心遣いと着物に対する知識と技術、そしてお客様のセンス、纏われる美しさはこの循環があってこそだと思いました。コロナに関しましては制作に集中できた面もあり、様々なことを見直す機会ができたと思います。開催できなくなったイベントや気軽に人に会えなくなったことで人との繋がりの大切さも実感しました。

續:
本当ですね。当たり前の日常が消えて行く日々。人と人の間に生まれる、ぬくもり、 何ものにも代えがたく。
今、こうしてお客様をお迎えできる喜びを店主、二代目、スタッフ一堂、噛みしめております。心からありがたく感謝でございます。

自然から「美と元気のエキスを抽出」する気持ちで


長沢碧作 九寸名古屋帯「実り」

續:
最後に作品制作で心がけたこと、お聞かせください。

長沢:
作品は1つ1つ心を込めて制作しています。自然から美しさや元気のエキスを抽出するような気持ちで図案を描いています。着物は元気や勇気を身につけられるものだと思っています。これを着たら新たな自分の魅力に出会えるかもしれない、「ときめき」を大切にしています。
実際に身に纏われた時に、その御方が美しく見えるように精進を重ねていきたいです。

續:
この二年間を通して、碧さんの純粋な心と直向きな姿に応援団長のような気持ちです。
ここからがスタート、ぎゃらりー泉の扉が開き、主役の舞台に立つ3日間、体調管理を万全にご来店くださるお客様を笑顔でお迎えいたしましょう。
どうぞよろしくお願いいたします。

長沢:
はい。心して挑ませていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
初個展の時には中央区近隣の公園、神社、庭園の紅葉も美しく色づいていると思います。
一人でも多くのお客様に人生で初めての初個展の場にお立ち寄りいただければと願っております。

2021年10月20日
聞き手:文化企画デザイン室 續久仁子


《開催終了》ぎゃらりー泉
型絵染 長沢碧 初個展
~瞳の奥に描かれた景色~

ぎゃらりー泉 型絵染 長沢碧 初個展~瞳の奥に描かれた景色~

銀座の街で行き交う人とすれ違う時にいつも感じること、
「この街に素敵な出会いを探しに来ている」
私は銀座もとじさんの御店の雰囲気が大好きです。
お客様皆様、社長様、スタッフの皆様のお人柄と心を揺さぶる商品があるからだと思います。
着物はお召しになる方々の数だけ美しい組み合わせがあるように思います。
自然を見た時に感じたトキメキや美しさをぎゅっと詰めて、作品一つ一つ、心を込めて制作いたしました。
挑戦の場、一人でも多くのお客様にお目にかかり、学ばせていただきたいと願っております。

長沢碧

会期:2021年11月12日(金)~14日(日)
会場:銀座もとじ ぎゃらりー泉
〈お問い合わせ〉
銀座もとじ女性のきもの 03-3538-7878

催事詳細はこちら

《開催終了》ぎゃらりートーク

長沢碧さんをお迎えし、ものづくりのお話を伺います。
日 程 : 11月13日(土)
時 間 : 10:00~11:00
会 費 : 無料
定 員 : 20名様限定(要予約・先着順【満席御礼】
場 所 :銀座もとじぎゃらりー泉

作家在廊

11月12日(金)~14日(日)各日11:00~18:00

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