第5回:「光源氏」
『源氏物語』の作者・紫式部の生涯を描くNHK大河ドラマ「光る君へ」が話題となっています。銀座もとじでは、雅な装いの文化が花開いた平安時代や『源氏物語』の世界観をより楽しんでいただけるマンスリーコラムを展開中。物語の主要人物と繋がりが深い「色」や人物像の背景をご紹介しながら、毎月ATENARIさんによる特別制作の和装小物を発表しています。
第5弾は主人公“光源氏”に着想。頭の中将と共に美しい舞を披露した「紅葉賀」の帖を想起させる「赤」色や、めくるめく逢瀬を象徴する牛車の車輪をモチーフとした男女の「羽織紐」と「簪(かんざし)」を数量限定で5月31日(金)11時に販売開始いたします。
『源氏物語』の主人公・光源氏
第5回目を迎える『源氏物語』シリーズのコラムは、物語の主人公である光源氏に着目。時の天皇である桐壺帝の第二皇子として生まれた“絶世の美男子”であり、教養も兼ね揃えた才色兼備な人物です。
しかし、煌びやかなイメージとは裏腹に、その生い立ちにまつわる背景はやや複雑。母の身分が低かったことや「光源氏が皇位につけば国乱が起こる」といった不吉な予言が下されたために、皇子でありながらも“源氏”という臣下の地位に落とされてしまう不遇な運命を背負っているのです。
二人の母の面影を追い続ける
『源氏物語』では、光源氏と数多の女性たちによる様々な恋愛模様が繰り広げられますが、その恋愛の原点には、亡き母・桐壺更衣と瓜二つの美しい容姿をもつ継母・藤壺宮への初恋がありました。
幼い頃に亡くした母の面影を重ねるように想いを募らせた光源氏は、禁断の仲と知りながらも密通に至り、のちに不義の子・冷泉帝が誕生。光源氏は表向きには自身の弟として接しながら、冷泉帝が世を治めるまで、成長を見守る存在となっていきます。
光源氏の美しさを象徴する「紅葉賀」のシーン
光源氏は、類稀なる美しい容姿の持ち主であるだけでなく、和歌や芸術にも秀でた人物でした。その象徴的なエピソードとして描かれているのが、紅葉の時期に催す祝宴である紅葉賀(もみじのが)のエピソード。舞楽の青海波(せいがいは)を舞う光源氏の姿は、“恐ろしいほどの美しさ”であったと綴られているのと同時に、詩句を詠む声までも“仏の迦陵頻伽(かりょうびんが)のような声色”と表現されています。
※ 迦陵頻伽‥美しい声のたとえ。また、極楽浄土にすみ、比類なき美声で鳴く想像上の鳥。
「赤」は官位五位の束帯の色
大河ドラマ「光る君へ」では、源氏物語のエピソードがさりげなく演出に盛り込まれ、史実と物語が溶け合う世界が楽しく描かれています。光源氏のモデルとされる人物は諸説ありますが、ドラマ内では「光源氏=藤原道長説」に寄り添った内容となっているようです。柄本佑さんが演じる藤原道長が赤色の束帯(貴族の正装)を身に着けたシーンが印象に残っている方も多いことでしょう。平安時代は官位によって装いの色が定められ、赤色は官位五位の装束の色。紫式部(まひろ)の父親が悲願の官職を得た時に纏っていた束帯も赤色であり、貴族の仲間入りとなったことが伝わる象徴的な場面でもありました。
光源氏が愛した女性は何人?
今回のATENARIさんの作品では、めくるめく逢瀬を象徴する牛車の車輪がモチーフとなっています。では源氏物語の中で、光源氏と逢瀬を交わした女性は何人いるでしょう。一人ずつ数えると・・・葵の上(あおいのうえ)、六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)、夕顔(ゆうがお)、空蝉(うつせみ)、藤壺(ふじつぼ)、朧月夜(おぼろづきよ)、源典待(げんのないしのすけ)、末摘花(すえつむはな)、花散里(はなちるさと)、明石の方(あかしのかた)、紫の上(むらさきのうえ)、女三の宮(おんなさんのみや)の十二人のようです。
1月から連載を開始したこのコラムでも登場した人物もいますし、これから登場する人物も・・。たくさんの人物の個性を、生い立ちや環境、住まい、装いや香り、和歌やしぐさでいきいきと描き分ける、紫式部の観察眼と表現力。「光る君へ」の放送は、時代を超えて人々を魅了し続ける源氏物語の世界に浸る絶好の機会ですね。
<参考図書>
吉岡幸雄著/「源氏物語」の色辞典 紫紅社
《5/31(金)販売開始》
「光源氏」をイメージした
限定制作の作品のご紹介
「光源氏」をイメージして、ATENARIさんが特別に制作くださった5月の限定作品は、男女ペアの羽織紐と簪です。
生涯を通じた細やかな逢瀬の数々を、牛車の片輪車に象徴させました。
平安の雅をまとった「波に片輪車」文様がテーマのデザインです。
紳士羽織紐「光廻る」132,000円(税込)
メープル漆塗・金蒔絵・正絹組紐(金具は銀にK23鍍金)
婦人羽織紐「光廻る」88,000円(税込)
メープル漆塗・金蒔絵・正絹組紐(金具は銀にK23鍍金)
かんざし「光廻る」(黒水牛角に金銀蒔絵・白蝶貝螺鈿)68,200円(税込)
〜プロローグ〜
『源氏物語』の誕生秘話
2024年のNHK大河ドラマ「光る君へ」がいよいよ放送開始!平安時代、世界最古の長編小説といわれる『源氏物語』の作者・紫式部にフィーチャーした、一人の女性の美しき物語が幕を明けました。
銀座もとじでは、そんなNHK大河ドラマ「光る君へ」の放送にちなんで、作品の核を担う『源氏物語』にまつわる特別なコンテンツを用意いたしました。銀座もとじならではの着物の視点も織り交ぜながら、『源氏物語』の恋愛模様でも大切な要素を担う”色彩”の豆知識や、登場人物の背景など、作品の世界観をより一層楽しめるコラムを約一年に渡り発信していきます。
第1回:「藤壺」
第2回:「若紫」
第3回:「葵の上」
第4回:「末摘花」
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