第9回:「頭中将」
『源氏物語』の作者・紫式部の生涯を描くNHK大河ドラマ「光る君へ」が話題となっています。銀座もとじでは、雅な装いの文化が花開いた平安時代や『源氏物語』の世界観をより楽しんでいただけるマンスリーコラムを展開中。物語の主要人物と繋がりが深い「色」や人物像の背景をご紹介しながら、毎月ATENARIさんによる特別制作の和装小物を発表しています。
第9弾は、「光源氏」の親友でありライバルでもある「頭中将(とうのちゅうじょう)」に着想した紳士羽織紐を数量限定で販売いたします。
光源氏の義理の兄「頭中将」は
親友でありライバル
「頭中将」とは平安貴族の役職名のことで、天皇の私的な要件を担う蔵人頭(くろうどのとう)と宮中の護衛を行う近衛中将(このえちゅうじょう)を兼任する重要なポジション。いわば超エリート官僚であり、さらに光源氏に負けず劣らずの華やかな容姿と教養を備えた人物です。
父は左大臣、母は時の天皇・桐壷帝の妹と、非常に恵まれた家柄に生まれ、実の妹が光源氏の正妻「葵の上」として嫁いだことで、光源氏とは義理の兄弟関係でもありました。
モテ男が集まり女性談義に花を咲かせた「雨夜の品定め」や、光源氏と共に美しい舞を披露する「紅葉賀」では、頭中将が若き光源氏にとって恋愛の師であり、かつ上流貴族界で双璧を成すライバルであることが描かれています。
また、頭中将のかつての恋人との間に生まれた婚外子を光源氏が引き取り養女として育てるなど、友人以上の強い絆で結ばれ、光源氏の人生に影響を与え続ける存在でした。
「頭中将」をイメージした
限定制作の作品のご紹介
今回は、頭中将が光源氏との友情を深めた須磨の地にちなんだ、源氏香(げんじこう)の「須磨」をモチーフの羽織紐を制作いただきました。
この頃の須磨は都から離れた寂しい地。帝が寵愛する姫君との密会が露見し、官位をはく奪された光源氏は、流刑に処される前に自ら須磨に退きました。頭中将(位が変わり宰相の中将)は、失意の中で暮らす光源氏をはるばる訪ねて元気づけるのです。
「源氏香」は「香道」の楽しみ方のひとつで、52通りの香りの組み合わせを「源氏物語」にちなむ名称と図柄で表しています。
和泉市久保惣記念美術館デジタルミュージアムからの引用
歌川豊国(三代)源氏香の図 須磨/江戸時代(和泉市久保惣記念美術館蔵)
紳士羽織紐「須磨の宴 グレー」88,000円(税込)
メープルに漆塗、銀蒔絵、正絹組紐/全長24cm
燻したような色と煙るような色の銀蒔絵を組み合わせ、マットな質感に仕上げました。一日の海の色をイメージした紐部分の配色と相まって、クールでモダンな雰囲気です。
紳士羽織紐 「須磨の宴 ベージュ」88,000円(税込)
メープルに漆塗、銀蒔絵、正絹組紐/全長21cm
しばしの別れにあたり笛と黒馬を交換したストーリーから、ベージュと黒のツートーンの銀蒔絵で仕上げました。短めの仕立てでアクセサリー感覚の着用効果をねらっています。
源氏物語シリーズコラム
第1回:「藤壺」
第2回:「若紫」
第3回:「葵の上」
第4回:「末摘花」
第5回:「光源氏」
第6回:「花散里」
第7回:「空蝉」
第8回:「夕顔」
【源氏物語シリーズ】アテナリ デザイナー角元弥子さんインタビュー
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