第11回:「六条御息所」
『源氏物語』の作者・紫式部の生涯を描くNHK大河ドラマ「光る君へ」が話題となっています。銀座もとじでは、雅な装いの文化が花開いた平安時代や『源氏物語』の世界観をより楽しんでいただけるマンスリーコラムを展開中。主人公の光源氏と繋がりが深い人物の背景をご紹介しながら、毎月ATENARIさんによる特別制作の和装小物を発表しています。
第11弾は、光源氏の年上の恋人である気高き貴婦人「六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)」に着想したかんざしと羽織紐を数量限定で販売いたします。
光源氏が口説き落とした
宮中の憧れの的「六条御息所」
六条御息所は美しさと教養を兼ね備え、元々は光源氏の兄の妃でしたが20歳頃に死別。未亡人として暮らしていた25歳の頃に17歳の若き光源氏に見初められ恋に落ちました。(年齢考証には諸説あり。もっと年齢差があったという説も)
都で憧れぬ者はいないと言われた貴婦人が、年下の恋人への深い愛情ゆえの嫉妬心と執着から、光源氏の他の恋人や正妻の枕元に生霊として現れてしまうという、源氏物語の中でも屈指の悲劇のエピソードの中心人物として、多くのファンの心を掴んできました。
源氏物語では、第4帖「夕顔」や第9帖「葵」など多数の挿話に登場しますが、中でも「葵」の巻は能舞台「葵上」の原案となり、美しい能面が般若に変わり鱗文の着物姿で鬼と化す場面などがよく知られています。
光源氏をひと目見たくて
葵上 vs 六条御息所の車争い
生霊と化した悲劇の貴婦人
宮中の高嶺の花である六条御息所を手に入れた光源氏でしたが、徐々に足が遠のくようになってしまいます。美しく教養があり、身分も高く非の打ちどころのない六条御息所は、その自尊心の高さから光源氏の前でなかなか素の自分を見せられず、心安らげる存在になれなかったのです。
今日も他の恋人の所へ通っているのだと、嫉妬の感情を押しころす日々の中、「葵祭」に参列する光源氏をひと目見ようと牛車でかけつけた六条御息所。見物人でごった返す道中で、妊娠中の正妻・葵上が乗る牛車との場所取り争いに敗れ、深い屈辱を味わった六条御息所は、やがて生霊と化し、産後すぐに葵上は帰らぬ人に。理性ではコントロールできない、自分でもどうすることもできない感情、心の辛さが和歌に表現されています。
嘆きわび空に乱るるわが魂(たま)を結びとどめよしたがへのつま
現代語訳:
あなたのつれなさを嘆き悲しむあまり 心乱れて中空にさまよう私の魂を 衣の下前の褄に結び付けてとどめてください
「六条御息所」をイメージした
限定制作の作品のご紹介
今回はアテナリさんに、高貴で情念のひそむ紫、その色を前面に出したデザインでかんざし2点と羽織紐を制作いただきました。
かんざしの上半分を青みの紫に調合した漆で塗り、純銀粉をランダムに蒔いて表情を出しました。光の加減で銀の光沢があらわれます。かなの名手という設定にちなみ、裏面には六条御息所に関わる歌から「きみ」と銀蒔絵で書き入れています。かんざし「紫雲 Ⅰ」66,000円(税込)※写真左が表面、右が裏面
黒水牛角に銀蒔絵/幅約4.5cm長さ約11cm
かんざし 「紫雲 Ⅱ」59,400円(税込)※写真左が表面、右が裏面
黒水牛角に銀蒔絵/幅約3.8cm、長さ約10cm
ダブルフェースのファセットとカラーグラデーションが美しいアメシストを銀の枠で包み、紫の濃淡の組紐で羽織紐に仕立てました。ナチュラルな透明感、輝き、色みは天然石ならではの魅力です。
婦人羽織紐 「紫晶」88,000円(税込)
銀、アメシスト、正絹組紐/全長約18cm
源氏物語シリーズコラム
第1回:「藤壺」
第2回:「若紫」
第3回:「葵の上」
第4回:「末摘花」
第5回:「光源氏」
第6回:「花散里」
第7回:「空蝉」
第8回:「夕顔」
第9回:「頭中将」
第10回:「朧月夜」
【源氏物語シリーズ】アテナリ デザイナー角元弥子さんインタビュー
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