第12回「明石の君」
『源氏物語』の作者・紫式部の生涯を描くNHK大河ドラマ「光る君へ」も最終局面へ。銀座もとじでは、雅な装いの文化が花開いた平安時代や『源氏物語』の世界観をより楽しんでいただけるマンスリーコラムを展開中。主人公の光源氏と繋がりが深い人物の背景をご紹介しながら、毎月ATENARIさんによる特別制作の和装小物を発表しています。
最終回となる第12弾は、光源氏一族を栄華へと導く重要な人物「明石の君」をモチーフとした帯留と紳士羽織紐を数量限定で販売いたします。
地方の娘が妃を産んだ―
明石の浦で出会った「明石の君」
「明石の君」は、明石の方・明石の御方(おんかた)とも呼ばれ、光源氏を出世させ、忍耐強く一族の幸せを支える姿が胸を打つ、源氏物語ファンの間でも人気の高いキャラクターです。
光源氏は朧月夜との一件があり京を離れ須磨での謹慎生活を送っていましたが、夢のお告げで明石へ移り、明石入道の娘である「明石の君」と出会います。
明石入道は、元々は大臣や官僚を輩出した上流の家柄であり、自分の娘を都の貴人に嫁がせることを夢見て、京の姫達と同等の教育や躾を施し、住吉大社の参詣も欠かさずに過ごしていました。
明石入道はチャンス到来とばかりに、光源氏と娘を引き合わせます。最初は、光源氏は都で待つ紫の上への気兼ねがあり、また明石の君も光源氏の高貴さに気後れしていましたが、徐々に打ち解け恋仲に。京の貴婦人達と比べても見劣りしない和歌のセンスや文字の美しさ、気品と知性に心惹かれていったのです。やがて明石の君は光源氏の子を身ごもります。
「明石の君」から「紫の上」へ
悲しみを交差させて託した姫君は
一族繁栄の起点に
懐妊からほどなく、朱雀帝の宣旨により光源氏の都への帰還が決定。華々しく政界へと復帰し、蟄居前の官位を上回る大納言、内大臣へと破竹の勢いで昇進。そこへ、明石の君が女の子を出産したと知らせが入ります。
かつて占い師に「あなたは女児は1人だけ恵まれ、しかも天皇の妻になる」と告げられていた光源氏。娘の教育を考え明石の君と共に京へ呼び寄せますが、田舎育ちで身分も低い母親の娘であっては帝の妃候補として不足があると、出自に申し分のない「紫の上」の養女として引き取ります。
娘の将来を最優先し、寂しさに耐えて我が子を手放す明石の君。託された紫の上は、光源氏との間に子供は恵まれず、複雑な思いを抱えながらも快く養女として受け入れ愛情を注いで育てます。
お告げの通り、娘は妃となって天皇との間に4男1女をもうけた上、第1皇子は東宮(将来の天皇)として成長。光源氏一族の繁栄を盤石なものとします。
「明石の君」をイメージした
限定制作の作品のご紹介
今回はアテナリさんに、明石の君をイメージして、優しく穏やかな色調の天然石を用いて帯留2点と紳士羽織紐を制作いただきました。男女ペアでのリンクコーデも素敵です。
穏やかな瀬戸内の水面をイメージさせる帯留です。落ち着いたブラウン系のムーンストーンに、金銀の蒔絵でハイライトを加えています。2本のゆるやかなラインは波模様のイメージでもあり、ふたつの人生の交差でもあります。着用時には動くため、蒔絵の金が常に光をおびて控えめに主張します。帯留 「明し Ⅰ」79,200円(税込)
銀、オレンジムーンストーンに金銀蒔絵/横約2.8cm ※写真は3分紐使用
帯留 「明し Ⅱ」66,000円(税込)
銀、オレンジムーンストーンに金銀蒔絵/横約2.2cm ※写真は3分紐使用
穏やかな瀬戸内の水面をイメージさせる羽織紐です。落ち着いたブラウン系のムーンストーンに、金銀の蒔絵でハイライトを加えています。組紐部分にもムーンストーンの色を繰り返すことで全体にまとまりのあるデザインになりました。2本のゆるやかなラインは波模様のイメージでもあり、ふたつの人生の交差でもあります。着用時には動くため、蒔絵の金が常に光をおびて控えめに主張します。
紳士羽織紐「明し」 99,000円(税込)
正絹組紐、銀枠、オレンジムーンストーンに金銀蒔絵/全長約24cm
源氏物語シリーズコラム
第1回:「藤壺」
第2回:「若紫」
第3回:「葵の上」
第4回:「末摘花」
第5回:「光源氏」
第6回:「花散里」
第7回:「空蝉」
第8回:「夕顔」
第9回:「頭中将」
第10回:「朧月夜」
第11回:「六条御息所」
【源氏物語シリーズ】アテナリ デザイナー角元弥子さんインタビュー
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