※最終更新:2024年6月
「糸も色もすべて、石垣島の大自然の恵みです」
「八重山上布にしか出せない風情がありますね」
店主 泉二啓太(以後 啓):次は八重山上布を紹介しましょう。宮古上布が作られる宮古島よりもさらに南西へ、沖縄本島から400~500kmの八重山諸島・石垣島で作られています。
会長 泉二弘明(以後 弘):八重山上布といえば、特徴的なのが「海晒し」です。織りあがった布を海水に晒すことで、布の汚れ・不純物を落として草木染(紅露染)の色を定着させるんですね。
啓:珊瑚礁のカルシウムが海水に溶けて色止めの効果があると聞いたことがあります。エメラルドグリーンの海に浮かぶ八重山上布・・・会長は取材で同行されましたよね。いかがでしたか?
雑誌「ミセス」の連載「きもの紀行」八重山上布特集(2003年 文化出版局)より。取材時に会長 泉二弘明も同行した。
弘:夢のようでした、心まで綺麗に洗われました。帰ってすぐに元通りですけれどね(笑)海ならどこでもいいわけではなくて、石垣島随一の美しさを誇る川平湾が海晒しの舞台です。海が静かな日を狙って、5時間くらい海に晒した後、鳥が来ない場所で天日干しを行います。島にはスコールがありますから、常に空模様とのにらめっこです。
黄色の染料となる福木。島の方々には防風植栽としても身近な存在。
啓:島に育つ苧麻から糸を作り、島の植物染料で染めて、最後は海晒し・・八重山上布は島の大自然の恵みから生まれています。
今回の展示会では色彩豊かなバリエーションに富んだ品が揃いました。
弘:伝統的な「紅露(クール)」染めの着物もご紹介しています。
八重山上布の着物に科布の帯を合わせた装い。白地に紅露(クール)で染めた絣糸が情趣深い。
啓:八重山上布といえば、このような白地に絣柄の着物を思い浮かべる人も多いかもしれませんね。「赤嶋上布」とも呼ばれて捺染で模様を染めています。実は今は捺染の紅露染が入手しにくくなっていますので、この2反は貴重です。
紅露は石垣島や西表島の山林のみに自生する、八重山上布特有の染料。
弘:スタッフの中に八重山上布の大ファンがいてね。女優の樋口可南子さんが本の中で八重山上布を着ている姿を見て一目惚れしたそうです。
手績みの苧麻糸。現在は緯糸のみ手績み糸で経糸はラミー糸を用いている。
啓:越後上布や宮古上布にはない大らかさ、伸びやかさがありますね。着姿に風情が生まれるというか、八重山上布にしか出せない雰囲気があります。
苧麻糸に紅露の染料を捺染している様子。
啓:帯は多彩な品が揃いました。手括りの絣で染められた色柄豊富な中からお気に入りの一反を見つけて、憧れの八重山上布をぜひ手にしていただけたらと思います。
八重山上布 九寸名古屋帯「花織 市松」緑色は福木の黄色と藍を染め重ねている。
《2024年夏》必見の八重山上布
会長 泉二弘明が選ぶ必見の一反
八重山上布
九寸名古屋帯「絣 幾何学」
私が選んだのは、涼やかな絣柄が目を引く名古屋帯です。石垣島の綺麗な海を思わせる清涼感のある藍色と白の寒色系の組み合わせ。あえて白の着物に合わせて涼感を届けるのはいかがでしょう。
店主 泉二啓太が選ぶ必見の一反
八重山上布
着尺「星降る夜」
八重山上布の着尺といえば、白地に紅露(クール)で伝統的な絣模様を染めたものが有名ですが、こちらは琉球藍で染めたひと味違う着尺です。藍地に白の絣がタイトル通り星のように瞬いて、物語性のある一枚。紅型や自然布の帯を合わせて、爽やかに着こなしていただきたいですね。男女どちらにもおすすめです。
「星降る夜」の物語をまとい、夏の美術館巡りへ。
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