『趣味どきっ!』でもご紹介
店主 泉二啓太 愛用コレクション
着物をそろえたいけれど、どれがいいのかわからない。そんな着物はじめの方に、番組やテキスト内で
「一枚の着物でこんなに楽しめる」
をテーマに、一枚の着物を街着からよそゆきまで着回すコーディネートの例をご紹介させていただきました。
こちらのページではより具体的に「なぜこれをおすすめするのか」の理由も添えて、アイテムごとに紹介してまいります。
まずは、一枚の着物から男の着物ライフをはじめましょう。
『趣味どきっ!』テキストに掲載のコーディネート一式を着用
きもの:風通お召 角帯:織楽浅野 羽織:無地お召
男性の和装一式(羽織なし)の予算
仕立て代込み 30万円程度~
(着物、帯、襦袢、草履、足袋、肌着、腰紐など小物)
着物を着るのに必要なもの>>
【1.愛用の着物】
着用範囲が広い「お召」が基本スタイル
スーツ地のウールもおすすめ
これから始まる着物ライフ、コーディネートの基本となるのは「長着(ながぎ)」とも呼ばれる着物です。人生で初めて、自分のために仕立てる着物の一枚目は何がいいのか。僕のおすすめは「お召(おめし)」です。
袴をつけて茶席へ
「お召」の着物は様々なシーンで楽しめます
ステップ1.着流しで街歩き(映画、ギャラリー、買い物など)
ステップ2.袴をつけてお茶席に
ステップ3.羽織を着て会食に
ステップ4.羽織・袴を合わせて改まった席に
お召は、先染めした糸に強く撚りをかけてから織り上げた布で、しなやかで光沢があるのが特長。11代将軍の徳川家斉が好んでお召しになられたということで「お召」と呼ばれるようになり、現在でも格付けの上位に位置づけられています。組み合わせ次第でカジュアルから準礼装まで、気軽なお出かけから友人の結婚式まで着回しでき、目上の方や年上の方にお会いする時も安心です。
お召の着物は、感覚としては、会社員の方にとっての「スーツ」、あるいは「白シャツ」に近いかもしれません。ネクタイを変えるように帯で印象を変え、改まった場所ではジャケットを着るように「羽織」をプラスします。
格やTPOなどが少しわかりにくい着物において、汎用性の高い「間違いのない」一枚を持っておくことで、着物ライフの楽しみは一気に広がります。
風通(ふうつう)お召
風通お召「菱格子 ねず」298,000円(裏地・仕立て代・税込)
『趣味どきっ!』テキスト内で紹介しているのが、この風通お召。僕にとっては制服のような、相棒のような存在です。特殊な二重織りで、袋状の中を「風が通る」組織であることからその名がついたと言われます。極細の糸を使っているので軽やかでで着心地が良く、しわになりにくいので大変頼りになります。
京都・西陣~銀座もとじオリジナル風通お召~工房見学レポート
無地お召
スタンダードな無地のお召は万能の一枚。墨色や灰味のあるくぐもった色は、都市の空間に馴染みやすいように思います。また、着物だけでなく羽織にもおすすめです。羽織にする場合は、着物と同系色の濃い色を選ぶと統一感が生まれ着姿全体が引きしまります。
光沢のあるウール
英国製 上質ウール100%「アマデウス365」
148,000円(裏地・仕立て代・税込)
ウール素材は一般的には普段着向きですが、上質なスーツ地のような光沢のあるものは、お召と同様に幅広く着ていただけると思います。銀座もとじではフランスの高級服地ブランド「ドーメル」社(製織はイギリス)の生地で着物を作ることができ、僕もスタッフも愛用しています。絹に比べ価格がお手頃であることと、雨に比較的強いのもメリット。空模様が心配な日も安心です。
きもの:ドーメル社ウール 角帯:男のきものシーズナルコレクション
(泉二啓太インスタグラムより)
《泉二啓太セレクト》お召を用いたコーディネート
(1)落ち着いた和食店へ
(2)夜のバーへ
【2.愛用の帯】
織りの角帯で正統派な印象に
染めの角帯で個性を演出
写真手前2本は織りの角帯(織楽浅野)、奥の3本は染めの角帯(男のきものシーズナルコレクション)
男性用の帯は「角帯」と「兵児帯(へこおび)」がありますが、お召の着物に合わせるなら、織って作られた「角帯」が汎用性が高くおすすめです。一重織りの博多織の角帯は一年を通して、帯芯の入る西陣織等の角帯は真夏以外に締めていただけます。 京都西陣の「織楽浅野」さんの角帯は、伝統と格式を踏まえたモダンさがあって、カジュアルから準礼装まで本当に重宝しています。 また、自由な表現が可能な「染め」の角帯は、織りの帯よりもカジュアルでこなれた印象になります。
【3.愛用の長襦袢】
物語のある柄で「裏勝り」を楽しむ
江戸古地図柄は会話がはずみます
男の着物には「裏勝り」という文化があります。江戸時代に度々発令された奢侈禁止令により、見える部分は地味に、その代わり裏地で大胆に遊ぶのが粋とする価値観が広まり、日本人男性の美意識として今も息づいているように思います。
江戸時代は、女性の前で男性が羽織を脱いだ時、裏地の柄でドキッとさせるのもお洒落の楽しみの一つでした。羽織だけでなく、長襦袢で「裏勝り」の粋を味わうのもおすすめです。羽織は脱がなければ裏地が見えませんが、長襦袢は袖口や裾が翻った時にチラッと見えるので、ぜひ「裏勝り」を楽しんでいただきたいです。
『趣味どきっ!』テキスト 40~41ページ
僕はオリジナルで作った古地図の長襦袢を愛用していて、番組内でも、これまでに発刊した着付け本でも度々着用しています。お酒の席で「銀座はどこ?」など質問されて、袖口から襦袢を引っ張り出すことになったり(笑)コミュニケーションのきっかけになっています。
【4.愛用の半衿】
着物に合う色が基本
時には柄もので華やかに
半衿は着物に合う色を選びます。グレーのお召に合わせるのであれば、グレーを基調とした濃淡があると便利。茶系のお召なら、半衿も茶系を基調にするとまとまりやすいです。 半衿は長襦袢に縫い付けて使用するので、半衿付けの手間を考えると、最初の一枚には濃い色の方が汚れが目立ちにくくて良いかもしれません。 無地の半衿が基本ですが、ちょっと洒落感をプラスしたい時は、柄入りの半衿にすることもあります。男性の着物は無地や縞などシックなものが多いので、顔まわりにワンポイントあるだけでも華やかさを演出できますよ。
【5.愛用の草履】
一日履いても疲れないのは必須条件
草履選びは、実は着物と同じくらい重要だと思っています。 疲れにくく履き心地の良い草履があれば、着物での行動範囲がどんどん広がるはずです。
綿入り草履
京都の職人さんが作る「綿入り草履」はNHK BSの「美の壷」でも紹介されたもので、伝統的な美しさがあり、厚さ15cmもの綿を圧縮して詰めた台は足当たりが優しく疲れにくいです。
履物 関づか
ビブラムソールの草履 (鼻緒:シープレザー /台:ウルトラスエード)
足の計測をして作る「履物 関づか」さんの草履は、モダンなデザインと靴のようなフィット感で、もはや僕の着物ライフには手放せない存在。ビブラムソールのものなら、濡れた路面でも歩きやすく安心です。
【6.愛用の羽織紐】
同じ羽織でも印象が一変
房付きの正統派と
カジュアルな無双タイプを使い分け
前述のように、男性は改まった席では羽織をプラスします。
組紐タイプ
羽織紐「リバーシブル 三色」
羽織には羽織紐が必要になりますが、一つ目に選ぶなら、ボリュームが控えめの房付きの「組紐タイプ」が汎用性があるように思います。房のボリュームが大きいほどフォーマルに、房がないものはカジュアル寄りになります。
無双タイプ
奥村公規作 羽織紐「兵庫鎖 二連」
「無双タイプ」と呼ばれる、紐を結ばず左右の見頃を繋ぐだけのものはカジュアルで洒落感が強い印象に。 僕は正統派の和の印象でまとめたいときは組紐タイプ、アート系のレセプションなど洋装の方が多い場には兵庫鎖(ひょうごぐさり)の無双タイプをシルバーアクセサリー感覚で使っています。
※兵庫鎖・・・ 兵具、主に腰に太刀をつける紐(帯取)に銀の鎖を用いたもので、鎌倉時代に流行した。
【7.毎日使う三種の神器】
衿どめ、上質な肌着、手ぬぐい
WEWILL×銀座もとじオリジナル肌着トップスとボトムス(黒)、衿どめ、てぬぐい「銀座の柳」
衿どめ
毎日を着物で過ごす僕が、毎日愛用しているのが、衿どめ、肌着、手ぬぐいです。 衿どめは小さなクリップのようなもので、数百円ですがその費用対効果は抜群です。男性は女性よりも着付けで使う紐が少なくラクな分、衿もとが崩れがちなのですが、衿もとが乱れていると全体までだらしなく見えてしまうので、長襦袢や着物とセットで使うのをおすすめします。
手ぬぐい
コロナ禍以降はハンドドライヤーが使えない店も多いので、手ふきの布は必携です。せっかくの着物ですから、ハンカチではなく手ぬぐいを。大事な着物を汚さないために、食事の時は衿もとに挟んでナプキン代わりにしています。
WEWILL×銀座もとじオリジナル肌着
他の記事でも紹介していますが、僕はこの肌着の心地よさにやみつきになり、着物の時だけでなく洋服の時も、さらに自宅や出張先のホテルでのルームウェアとしても着るようになって、気がつけば8枚に増えていました(笑)。 着物ライフを継続していくためには、全てにおいて快適であること、「着ていて幸せ」と感じられることも大切だと思っています。 肌に触れるものこそ、上質な素材のものを選ぶことをおすすめします。
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