菊池宏美　記念作品と御祝いメッセージ

菊池宏美 作
プラチナボーイ 江戸小紋 着尺
「長立涌」

作品コメント
江戸小紋作品の制作は毎日が一期一会ですが、その中で特に自身の指針となる作品が二つあります。
一つは、師である藍田正雄氏の縞です。
偶然出会った作品に惹きつけられ、先生の門を叩くきっかけとなりました。

二つ目は広巾のプラチナボーイに染めた極通しです。
師の元を独立し、初めて手がけた作品です。そこに向きあう緊張感は今でもありありと蘇ります。
毎日の仕事の中で、迷ったとき、つまずいたとき、時に浮き足立ったとき，いつも自分を初心に戻してくれる存在であると共に、美しいこの柄に向き合うことは未来への扉を開けてくれる希望でもあります。

今回、広巾のプラチナボーイには極通しを、銀座の柳をイメージした柔らかなブルーグリーンで、並巾のプラチナボーイには数ある縞の中から長立涌を銀座の粋をイメージした金茶で染めました。
プラチナボーイに染められた江戸小紋のしなやかさを感じて頂けたらと思います。

菊池宏美 作
プラチナボーイ 江戸小紋　着尺
「極通し」

菊池宏美 作
プラチナボーイ 江戸小紋　額裏
「律の風(りちのかぜ)」

作品コメント
型には、制約があります。型の幅、柄の向き…着物用の型なので縦方向には繋がりますが、横に繋がるようには出来ていないのです。横に広がりのある額裏にどの様に型を乗せてゆくのか、着物の時と視点を変えてみると、型は制約があるから面白いと感じてきます。今回、背景の水玉のグラデーションに用いた型紙も着物を染める型紙としては、縦方向にグラデーションが出る型紙です、時代的に古い型紙のせいか幅が一寸に満たないのです、この型を使いたいが、寸法が足りず思案しましたが、夜空に向かって水玉が消えて行くので、上部の型の足りないところに柄がなくても違和感は有りませんでした。その様に額裏には、型の使い方に面白さがあります。
月の中には雲竜の型を、ススキと共に、秋の風を感じて頂けたらと思います。

菊池宏美 作
プラチナボーイ 江戸小紋　額裏
「美人図」

作品コメント
絵画的な風情のある中型と、江戸小紋を組み合わせた表現は、2011年の自身の独立当初、額裏のご提案から始まりでした。この表現を“型合わせ”と呼んでいます。型合わせの表現は合わせる型紙、色の組み合わせで無限に思えます。製作する毎に次のテーマが見えてきます、新しい表現の可能性を感じることが出来ます。こうした表現は作り続けることでしか前進できないと思います。その様に新しい事への挑戦を続ける場を頂けることに感謝しております。

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菊池宏美 さんからの御祝いメッセージ

この度は、新社長御就任、誠にお目出度うございます。
藍田正雄正先生の工房に初めて訪れて頂いた時のことを昨日のように覚えております。
銀座もとじに入社されて間もなくと言うことでした、先生のお話に熱心に耳を傾けられるお姿は、現場におもむき、根本から物事を探求されてこられた会長様と重なりました。
新たなお立場となり、一層のご活躍をご期待申し上げますと共に、御社のご発展を心より祈念致します。

菊池宏美

菊池宏美 さんのご紹介

男女問わずまといたくなる清々しさ。
師の言葉を胸に染める、平成の江戸小紋。

群馬県伊勢崎市生まれ、現在も同市に個人工房「よし菊」を構える。
早稲田大学教育学部卒業後、大手電機メーカーに入社、志を持つ仕事仲間と第一線で開発に打ち込む日々を送る中、心に芽生えた「時代を越えて残るものは…」偶然と必然、運命の出会いは自らの心が引き寄せるものなのか、ふと目を向けた先にあったのが後に師となる江戸小紋師・藍田正雄氏が染めた江戸小紋の反物でした。迷いも戸惑いもなく第二の人生の扉を開き、以後13年間、心技と手技、江戸小紋師としての精神を学びます。師は弟子たちを伊勢の白子へ同行させ、小紋師として型紙を見極める眼を育て、菊池さん自らも中形の型を学び、江戸小紋師にとっての型紙がいかに尊いものであるか学びます。江戸小紋として求められる極小美を宿した反物には静謐な静けさを、作家として型を併用し創造力で生み出す反物には一つの世界観を、菊池さんが染め上げるその両方が師である藍田正雄氏から受け継いだ「今に生きる江戸小紋」です。

2019年トーク会にて、左から二人目が菊池宏美さん。

2020年　第54回日本伝統工芸染織展　奨励賞・大丸松坂屋賞
2022年　第56回日本伝統工芸染織展　奨励賞

銀座もとじ和染　2016年、2019年個展開催
2015年35周年記念展出品
2020年40周年記念展出品

菊池宏美 さんの他の作品・詳しい情報

菊池宏美 さんについての
おすすめの読み物

2016年の個展に際し、多摩美術大学教授・外舘和子さんに取材執筆いただいた和織物語「型紙から拡げる染小紋 - 菊池宏美の世界」を公開しています。

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