男性の着物は、女性に比べるとどうしても色数が少なくなります。だからこそ、小物に凝るのが男のおしゃれ!まず第一弾は、半衿、羽織紐、草履、帽子です。 近頃では男性用の色半衿が揃ってきて、着物に合わせて色や素材を変えて衿元のお洒落を楽しむことが出来ます。銀座もとじでも、オリジナル半衿を微妙なニュアンスカラーでバリエーション豊富にご用意していますし、お好みの色で別染めもできます。きものの色によって半衿の色をかえてみたり、季節によって違う半衿を合わせて着物の印象を変えてみたり、これまで以上に衿元のこだわりを表現することができます。
また、羽織紐は、女性の帯締めのように、同じ着物でも全体のイメージをがらりと変えてくれる、大事な脇役です。平組や丸組のものを結ぶタイプのもの(房あり・房なし)や、紐の中心に石、ガラス、陶器、銀製品などが付いている「無双(むそう)羽織紐」と呼ばれるタイプのものなど種類も豊富です。その日の気分やお出掛け先によって使い分けるとより一層楽しんでいただけます。
草履は靴と同様に選ぶ物によっては、歩きにくいこともありますので、ぜひ慎重に選んでください。私のお勧めは、中に17センチ程度の厚みのある真綿をギュッと圧縮して入れ込むという職人技で作られた「本真綿入りの草履」です。足当たりが柔らかく、衝撃吸収力もあるので、長時間歩いていても、疲れが少ないと実感できる優れものの草履です!
最後に少し勇気が要るかもしれませんが、男のお洒落の極みは「帽子」です。和のダンディズムを醸し出し、大人のゆとりさえも演出します。帽子も季節によって変えると素敵です。
特に私がお勧めなのは、夏は、ブンタール(椰子の枝の素材)で作った“植物素材の帽子”です。植物の素材は風通しも良く、夏の涼やかな着物(上布や夏大島)と相性がぴったりです。
そして3シーズンを通してのお勧めは、ウサギやビーバーの毛を吹き付け、何層にも形成してつくったフェルトのソフト帽。夏目漱石が好んで被り、小説にも出てくる明治期の男性たちが外国を真似て被っていたあの帽子です。外国映画に出てくる紳士達は敢えて帽子を斜めに被り、片方の目が半分見えるか見えないかにして陰影を作ってかっこ良く登場します。 ぜひあの帽子を着物で活用して独自の被り方でお洒落感を発揮してください。
日本では真っ直ぐに載せて被る人が多いのですが、真っ直ぐに被る場合も斜めに被る場合も取扱いは一緒です。帽子の頭頂部の山になっている3角形のところはつかまずにツバを両手で軽く持って着脱します。
私どもではフランスでもご活躍されていた帽子デザイナーの清水晶子さんが独自にデザインし、手作りしている左右非対称のソフト帽を取り扱っています(通常は58センチ位に作られていますが、オーダーもできます)。
清水晶子さんの帽子の特徴として、そのまま真っ直ぐ被っていただくだけで、ツバに動きがあるため、少し斜めに被ったような雰囲気が出て、お洒落に被る事が出来ます。洋服にももちろん抜群に似合います。
帽子はファッションを更に自分風にグレードアップする和のダンディズムです。いつもと違う自分になれますから是非お試しください。 小物もこだわりを持って選ぶことで、男のきもの生活の楽しみをより一層深めてくれ、きものでのお出掛けの時間がさらに楽しいものになるに違いありません。 小物のこだわり、極めてみませんか?
泉二弘明の”きもの生活のすすめ” 一覧