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人間国宝・北村武資作「羅文帛」着尺|店主 泉二弘明のおすすめの逸品

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店主 泉二弘明のおすすめの逸品 人間国宝・北村武資作「羅文帛」着尺

「この羅文帛(らもんはく)と名付けられた着尺、平織なんですけれど、反物の表面を見ていただくと、ゆらぎが織りで表現されていて、波のような陰影を感じる織りなんです。 写真だと少し分かりにくいかも知れませんが、光沢感といい、糸の細さといい、ゆれるような陰影の織りのすごさにうっとりしてしまうような作品です。 この着尺を目にしたときの感動から、あらためて北村先生のすごさを思います。」 銀座もとじは、今月2月2日(木)から19日(日)まで、『人間国宝 北村武資展』を開催しております。 長年誰も成しえなかった、古代の織物の復元を試み、独自の手法で成し遂げ、1995年に「羅」、2000年に「経錦」の技術で、人間国宝に認定された、北村武資氏。
15歳から織の道に入り様々な場所で修業を重ね、独学で織の技術を磨き上げてこられました。60年に及ぶ織の道は、北村武資さんの人生そのもの。 今月のおすすめの逸品、波のようなしなやかなゆらぎの美しい「羅紋帛」が、われわれを織りの世界の深淵にいざないます。
人間国宝・北村武資作 羅文帛

現代に生きる織

1972年、「長沙馬王堆漢墓(ちょうさまおうたいかんぼ)写真速報展」で出会った「羅」という織物。その幻想的な美しさに魅せられ、しかもそれが2000年前の人々の生活の中で生きていた美しさであったことに感銘を受けた北村氏。それから、そこで見た写真のみから推測して羅を復元したということに驚かずにはいられません。
羅文帛と店主・泉二
羅を自在に織ることができるようになった北村氏が、次に目指したのは「経錦」の復元でした。「経錦」も中国の唐の時代に日本へ伝わりましたが、製織が比較的容易な緯錦が主流となり、奈良時代以降には織られなくなった織物です。
人間国宝・北村武資作 羅文帛アップ
北村氏の織りは、単なる古代製織技法の復元ではなく、『現代に生きる織』と言われます。古代とは全く違う独自の世界。織技の解明、継承を求めつつも、現代の街に合う色や地風を作り上げる。かつて古代中国の人々の中で羅が生きてきたように、現代に生きる織物を現代感覚で作り出していかなければならないと考えているのです。

北村武資作 角帯「羅(ら)」

店主・泉二と角帯「羅」
『羅』とは、経糸を捩らせながら織られた隙間のある網状の捩(もじり)織物です。羅の組織には経糸が捩れ合ったところに緯糸が通っている目の細かい網捩と、捩れをはずしたところに緯糸が通っている目の粗い籠捩があり、この二つを組み合わせて文様を織り出します。 この二種のうち、一般的には網捩が表出して文様を作り出すのですが、北村氏の場合は逆に籠捩で文様を織り出したり、網捩と籠捩を同等に組み合わせて連続させるなど、独自の羅を完成させています。 しっとりと落ち着いた深い緑色。これはダークグレーと深緑の色糸が重ねられることで表現されています。奥行きのある彩りからは羅の立体感がよりいっそう美しく感じられる角帯です。

北村武資作 角帯「帛(はく)」

『帛(はく)』と呼ばれる織種の角帯、「帛」とは絹を意味します。織技法は平織基本の綴れ組織。上品な落ち着きのあるお色味と、しなやかな風合いの角帯です。身体に添う織の生地感は極上の着心地を伝えます。また、片方の手先には『武』の落款がほどこされています。

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