店主 泉二弘明のおすすめの逸品
プラチナボーイ 結城紬 地機 生掛
「ニュアンスかすれ縞」黒×緑 (広巾)
今回の「店主 泉二弘明のおすすめの逸品」は、黒と緑で織り上げた細い縞模様がお洒落な、雄だけの蚕 プラチナボーイの繭を用いた「生掛(なまがけ)」による結城紬の逸品のご紹介です。シンプルな柄行ながら表情豊かな見事な織り上がりを見せる秘訣は、素材の上質さと歴史ある伝統の技術を踏まえた結城紬ならではのものです。
黒と緑で織り上げた細い縞模様。遠目には一見無地感にも見えますが、黒地に緑の極細の縞のニュアンスが、生掛による真綿紬のほっこりした風合いと相まって、表情豊かに織り上がっています。絶妙な色選びがお洒落な、店主泉二おすすめの結城紬の逸品です。
「生掛(なまがけ)」とは・・・
ふつう繭は、乾繭(かんけん)にしてから煮出して糸を取りますが、「生掛」は繭になりたての生の状態から糸を取ったもの。蚕が繭を作ってから、2週間ほどでさなぎにかえってしまうため、その間に繭を煮出して、真綿にし、糸をぎます。蚕の成長のリズムに合わせてそれらの工程をおこなわなければならないため、生掛けで糸を採ることはなかなか困難です。そのため、通常は繭になったらすぐに乾燥させる「乾繭(かんけん)」が、一般的なのです。

そして、この大変希少な生掛けで出来上がった糸を、「地機」で織り上げています。国の重要無形文化財に指定されている「結城紬」は、
1.使用する糸はすべて真綿より手つむぎしたものとし強撚糸を使用しないこと
2.絣模様を付ける場合は手くびりによること
3.地機で織ること
の3つの要件が定められています。
「地機(じばた)」とは・・・
「地機」とは、 ケヤキの皮をなめした腰当てを腰に巻きつけ、経糸を腰にまとめ、緯糸を打ちこむときにその張り具合を腰と足でコントロールして織る、古来からの技法です。織手が全身の力を使い織機と一体となって織り上げ、独特の大きな杼(ひ)で何百回となく糸を打ち込むため、織りあがった着物は強く丈夫でありながら、しなやかで肌触りが良く、また数多く打ち込まれた糸が空気を含むので着て暖かいと言われています。
本場結城紬検査協同組合による証紙
約16項目に渡る厳しい検査項目をクリアした、品質を保証された結城紬には、本場結城紬検査協同組合によって証紙が貼られます。
左から、
「本場結城紬検査合格の証」
「品質表示ラベル(真綿手紬糸、絹100%)」
「産地証明ラベル(結城の「結」)」
「糸とり婦人図ラベル(「手つむぎ」を表す)」
「検査証ラベル」
「本場結城紬検査之証(地機)」
また、40を越えるさまざまな工程で、伝統技法を守って織り上げられる結城紬は、平成22年秋、ユネスコ無形文化遺産に登録されました。
一生ものの「結城紬」
織手の思いが込められた「地機」で織り上げられる結城紬。「結城紬」が親子三代にわたって着続けられるといわれる理由はこの点にもあります。
さらに、プラチナボーイの糸は細く長いのにとても丈夫なので、結城紬の糸取りや織りでも切れにくく、結び目が少ないので、織ったときの凹凸が少ない"平らな"生地を作ることができました。
お仕立て前には、産地にて湯通しをします。着るほどに肌になじむ結城紬は、何度もお召しになり、洗い張りをし、そして代々受け継ぎ、その味わいの変化をご堪能いただけるおきものです。
一生ものの「結城紬」、ぜひお洒落で上質なひと品をお持ちになっていただきたいきものです。ご自分の体に添うように馴染み、より心地よい着心地へ、よりぬくもりある風合いへ、人生の中で時と共に変化していく特別な着物の楽しみを味わっていただけたらと思います。