撮影:枦木功さん(nomadica)
人生の節目に礼を表する装い
男性の礼装・略礼装とは?
正装・礼装とは、単にフォーマルな装いであるというだけでなく、礼を尽くす心を表すために着用するもので、衣服を改める行為によって「私はあなたのことを大切に思っています」という、自らの思いを相手に伝えます。 また同時に、普段着とは違う晴れ着に身を包むことで、厳粛な気持ちを改めて自分自身に言い聞かせる意味も込められています。
日本人は装いを通して、古くからハレとケの世界を分けてきた文化・精神を維持してきたのです。
このページでは、改まった席に呼ばれた時のために、礼装・略礼装についてわかりやすく解説します。
【目次】
黒紋付(第一礼装)
色紋付(第一礼装~準礼装)
略礼装(セミフォーマル)
茶席の装い
黒紋付は第一礼装
新郎や父親・仲人、受勲式、主催者の装い
(写真)プラチナボーイの紋付羽織に人間国宝・甲田綏郎氏による精好仙台平の袴を合わせた、会長・泉二弘明愛用の一式。
改まった席での装いとして、人生の節目に最大限の礼を表する装いが紋付羽織袴です。紋の付いた着物(長着)と羽織に仙台平と呼ばれる縞柄の袴を合わせるのが基本。紋の数は五つ紋・三つ紋・一つ紋の三種類で、数が多いほど格が高くなります。
黒紋付は最上格の第一礼装となり五つ紋に限られ、結婚式であれば新郎やその父親・仲人、また受勲式や宴席での主催側が着用します。
黒紋付羽織袴(予算:一式67万円〜)
《着物+羽織》黒く染めた羽二重(はぶたえ・細い生糸を製織した滑らかな絹地)に染め抜き日向紋(そめぬきひなたもん)五つ紋をつけます。
《袴》仙台平(せんだいひら)の縞袴が基本。縞が太いほど若々しく、細いほど落ち着いた印象に。
《袴下帯(はかましたおび)》手持ちの角帯で良いですが、袴の土台となるので緩みにくく袴の色に馴染むシンプルな無地の帯を締めます。
《小物》半衿・羽織紐・扇子・足袋・雪駄の鼻緒は白が基本。羽織紐は房が大きめで華やかなものを選びます。
色紋付は五つ紋で第一礼装、
三つ紋・一つ紋なら準礼装に
(写真)濃紫色のプラチナボーイの紋付羽織に仙台平の袴を合わせた社長・泉二啓太私物。友人の結婚式等へも着用している。
色紋付は五つ紋を付ければ黒紋付と同等の最上格となり、三つ紋・一つ紋にすれば少しカジュアルダウンするので準礼装として、友人の結婚式やパーティーへのお呼ばれの席に相応しい格になります。
自分が好きな色、似合う色で染めることができるのは誂えの魅力です。黒紋付では羽織紐は白が基本ですが、色紋付の場合は白に近い色で雰囲気を柔らかくしても。
色紋付羽織袴(予算:一式55万円〜)
《着物+羽織》紋が5つ入れば最上格に。上品で顔映りの良い色を選びます。生地は羽二重や縮緬など。
《袴》黒紋付と同様。
《袴下帯》黒紋付と同様。
《小物》半衿・扇子・足袋・雪駄の鼻緒は白が基本。羽織紐は白または白に近い色を選びます。
略礼装(セミフォーマル)
紋付羽織に袴ありorなしで
礼を表しながらお洒落に
略礼装の場合、着物や羽織の素材には、お召や染めの着物が適しています。気軽なパーティーなら、袴はつけず、仰々しくならないように羽織に一つ紋のみ、または紋なしでも問題ありません。紬の着物にお召の羽織を合わせるなど、着物と羽織とで素材を変えるとお洒落な印象になります。
(写真)グレーのお召に墨色の一つ紋の羽織を合わせて。無地のお召袴で、略礼装の中でも格を上げた装い。
略礼装の装い(予算:一式39.8万円〜)
《着物》上品な色合いの無地や地紋入りのお召はコーディネートもしやすく重宝します。江戸小紋等にするとより気軽な雰囲気に。
《羽織》着物に合う色を選びます。初心者なら着物より濃い色が合わせやすくおすすめ。着物より明るい色の羽織はより着物上級者の雰囲気。写真は霞のようなぼかし染めをあしらったお洒落な羽織でワンランク上の装いに。
《角帯》改まった雰囲気を出すには織りの角帯。染めの角帯ならよりお洒落感を演出できます。
《小物》羽織紐はフォーマル感を出すなら組紐を結ぶタイプ、カジュアルなお洒落感を出すなら飾り玉の付いたお洒落なものなどにしても。半衿は着物との調和で色を選び、履物は草履にします。
茶席の装い
一つ紋のお召の着物に
お召素材の袴が基本
お茶席では袴をつけ、羽織は着ません。一般的には、一つ紋を入れたお召の着物に、縞の仙台平か無地のお召袴をつけ、雪駄を履きます。無地のお召の着物にお召の袴を合わせれば、ほとんどのお茶席で通用します。落ち着いた色合いのものを選びましょう。
茶席の装い(予算:一式38万円〜)
《着物》グレーや茶系などの落ち着いた色合いの無地お召等を選びます。
《袴》仙台平の縞袴か無地のお召袴を。縞袴の方が格が上がります。地紋のある紋袴はややカジュアルダウンした雰囲気になります。
《角帯》着物や袴に調和する落ち着いた色合いの角帯を締めます。写真では、わずかに見える西陣織りの柄がさりげないアクセントになっています。
《小物》扇子は基本的には流派ごとの指定のものを用います。足袋は白足袋にし、雪駄の鼻緒は白が正式ですが、グレーでも良いでしょう。
記事内の着物コーディネート写真は『MENS KIMONO BOOK 着付けDVD付 はじめての「男の着物」』(株式会社二見書房)より
撮影:寺岡みゆき