「ーヱフカ(カフヱー)」の文字をモチーフにしたビジュアルは、アートディレクター・矢後直規氏によるデザイン。当時流行したアールデコを基調に「交差」を表現しています。
銀座もとじ男のきもの
シーズナルコレクション
2022春夏「交差」
今季のデザインの着想源となった銀座の3つのカフェーとは?
着物や帯としてどのように表現しているか、作品のポイントとともにご紹介します。
【目次】
① 名だたる文化人が通った「カフェー・プランタン」
②伝説のバーテンダーがいた「カフェー・ライオン」
③ブラジル珈琲を広めた「カフェー・パウリスタ」
名だたる文化人が通った
「カフェー・プランタン」
「プランタン」はフランス語で「春」を意味し、日本で初めて店名に「カフェー」を つけたことでも知られる。1911年3月、2人の画家、松山省三氏と平岡権八郎氏がパリ のカフェーに倣い芸術家や文学者の社交の場として開業。当初は会員も募り、洋画家 の黒田清輝、岸田劉生、作家の森鴎外、永井荷風、谷崎潤一郎、マスコミ関係者、俳 優などの文化人が名を連ねた。
染角帯 赤城紬「銀座風景」
銀座育ちの洋画家が銀座の街並みを描いた作品から着想を得た角帯。ゴッホ風の強烈な色彩と強い陽射しに照らされた街道が印象的なコントラストを生み、装いのアクセントに。
伝説のバーテンダーがいた
「カフェー・ライオン」
1911年8月に開店。洋酒と洋食の提供が中心で、伝説のバーテンダー・濱田晶吾氏が 作る本格カクテルが人気を博した。このことがきっかけで多くの日本人がカクテルに 親しむことになったと言われている。中でもカクテル「ミリオンダラー」は文藝春秋 の 創業メンバーや小説家にも愛飲され、読売新聞の広告文を掲載するほど愛着を示した とも言われている。 また、女給(ウェイトレス)が和服にエプロンの揃いの衣装でサービスすることで 知られ、大正時代に道路向かいに開店した「カフェー・タイガー」とのサービス合戦 は、 当時「獅子と虎の対決」とメディアを賑わせた。現在銀座7丁目にあるビヤホール 「銀座ライオン」は、経営は異なるがカフェー・ライオンから屋号が引き継がれてい る。
夏きもの 赤城紬「ミリオンダラー(薄柘榴)」
「カフェー ライオン」の伝説のバーテンダー・濱田晶吾によるカクテル「ミリオンダラー」(※)の色に着想を得た、シャリ感が心地よい赤城紬のきもの。他に寒色系もラインアップ。
※ジンベースにグレナデンシロップ(柘榴の果汁による赤いシロップ)を加えた、当時大人気となったカクテル。文藝春秋の創業メンバーや多くの小説家にも愛飲された。
ブラジル珈琲を広めた
「カフェー・パウリスタ」
1911年12月に開店。「パウリスタ」は「サンパウロっ子」の意味。コーヒー中心の提供で店員は若い男性。1杯5銭の庶民的な価格により、芥川龍之介などの文化人のほか 学生や社会人なども多く出入りした。低価格が可能だったのは、開業した水野龍氏がブラジルへの日本人移送の見返りとしてサンパウロ州政府よりコーヒー豆の無償提供を受けていたため。3店舗の中で唯一現存し、1978年にはジョン・レノンとオノ・ ヨーコが訪問。「銀ブラ」の語源は諸説あるが「銀座パウリスタにブラジルコーヒーを飲みに行くこと」であるとする説もある。
染角帯 赤城紬「カフェー パウリスタ(珈琲)」
当時、西洋文化の象徴であったアルファベット書体で「PAULISTA(パウリスタ)」を解体し新たに再構築したデザイン。他に「プランタン」「ライオン」バージョンもラインアップ。
銀座もとじ男のきもの
シーズナルコレクション
「着物をワードローブの一つの選択肢に」。
二代目泉二啓太の願いが込められた、
『銀座もとじ男のきもの シーズナルコレクション』は、
2015年秋冬より始動、今季11シーズン目を迎えました。
上質な素材と熟練した職人技に少しの遊び心を加え、
「着物をファッション感覚で楽しんでいただく」をコンセプトに、
今の時代にフィットした“和の装い”を提案しています。
4月29日(祝・金)販売開始!
2022年春夏「交差」
価値観の大きな転換期となった明治から大正時代。
1911年、銀座にはカフェーの開店が相次ぎ、
流行の先端を行く人々が集まり刺激しあい、
日々新しいカルチャーが生まれていたという。
名だたる文化人が通った「カフェー プランタン」
伝説のバーテンダーがいた「カフェー ライオン」
ブラジル珈琲を広めた「カフェー パウリスタ」
常連の画家が壁に描いたドローイングや
流行した色彩豊かなカクテル等
当時のカフェー文化から着想を得て着物や帯に表現。
心も装いも開放的になる季節に、
スパイスの利いた新鮮な着こなしをご提案します。
【銀座もとじ男のきもの
シーズナルコレクション 2022春夏】
販売開始:2022年4月29日(祝・金)11時~
銀座もとじ男のきもの、オンラインショップにて
〈お問い合わせ〉
銀座もとじ男のきもの 03-5524-7472
矢後 直規(Naonori YAGO)氏
アートディレクター / グラフィックデザイナー
≪ プロフィール ≫
1986年、静岡県生まれ。株式会社SIX。主な仕事は、日本航空系LCC・ZIPAIRのロゴ、シンボル、機体デザイン、制服のディレクションなどのブランド開発。Roppongi Hills Fashion、Laforet HARAJUKUなどのビジュアルデザイン。矢野顕子などCDジャケット、篠山紀信など写真家のブックデザイン。
2016年ドイツデザイン誌novum、2018年中国デザイン誌 Package and Design Magazine、2020年COMMERCIAL PHOTOで特集され、2020年2月にラフォーレミュージアムにて初大規模個展「婆娑羅」を開催。青幻舎から初作品集「婆娑羅」が出版される。
Instagram @yagonaonori