(上写真)重要無形文化財 久留米絣 松枝哲哉作「輝映」
「松枝家の久留米絣」を応援いただいている皆様へ
2023年7月10日に福岡県久留米市田主丸町で土石流が発生。松枝小夜子さんと松枝崇弘さんが故・松枝哲哉さんと共に守ってこられた久留米絣工房「藍生庵」も甚大な被害に見舞われました。
そのニュースを見たお客様から日々心配の声、支援したいというお声をいただき、銀座もとじでは応援募金箱を設置。松枝家の久留米絣ファンの皆様のお気持ちを集めさせていただき、先日、皆様に代わりお届けしてまいりました。皆様のあたたかいご支援に心より感謝申し上げます。
松枝小夜子さんから御礼のお手紙を拝受いたしましたので、こちらにご紹介させていただきます。
松枝小夜子さんからのお手紙(抜粋)
去る七月十日、久留米市田主丸町竹野の土石流
鉄砲水の被災にて、半壊致しましたことで、
泉二様、泉二様のお客様より
大変お心ごもりの過分なお見舞いを
賜りまして、心より御礼申し上げます
励ましのお声を寄せて下さいまして
感謝申し上げます
遠く心寄せて下さいました皆様の御心が
田主丸工房 哲哉の愛した工房に心の輪が
和となり励みを戴き、復興に向かって
おりますのでご安心願います
皆様のお力添え賜り誠にありがとうございました
松枝崇弘さんがご自身のインスタグラムでも情報発信をされていますので、ぜひご覧ください。
新たに藍建てしたものも上手くいき、被災後第一号の染めが行われ、また、土砂崩れで通行止めになっていた道も徐々に復旧しているようです。
新しい藍甕で作られる新作を楽しみに、ファンの皆様へお届けできる日をご期待いただけますと幸いです。
ぎゃらりートークの動画を公開中
2022年3月に「松枝家の久留米絣~伝統と伝承の道~」展を開催。松枝小夜子さん、崇弘さんをお迎えしたぎゃらりートークの様子を全編動画で公開しています。故・松枝哲哉さんとの思い出の写真も多数ご紹介しています。
今、父との記憶に立ち返り
2022年3月開催の「松枝家の久留米絣 ~伝統と伝承の道~」展に際し、松枝崇弘さんが亡きお父様への思いを届けてくださいました。写真左より松枝崇弘さん、師と仰ぐ森口邦彦先生。 2022年2月に開催された「二大巨匠展」に来場され、合作「雪景」を前に記念撮影。
松枝家と銀座もとじ 出会いからの歩み
(1)2013年3月 松枝夫妻の工房へ初訪問
初個展を前に店主・泉二とスタッフが工房へ。ボランティアで地元の小学生に「藍染め」の課外授業を行っていると知り嬉しくなりました。
(2)2013年4月 「久留米絣」誕生秘話 &絵絣の技法
「藍はかわいいし、家族の一員みたいなもの」と語る哲哉さん。人間国宝の祖父・松枝玉記さんとの思い出も語られています。
(3)2013年4月 久留米絣工房「藍生庵」を訪ねて
筑後平野の自然に抱かれて建つ「藍生庵」からの景色、工房の中の様子がよくわかるレポートです。
(4)2013年4月 久留米絣 松枝哲哉・小夜子 - 二人展|和織物語
初個展に際し、多摩美術大学教授・外舘和子先生に取材執筆いただきました。
(5)2013年4月 ぎゃらりートークレポート
松枝夫妻を銀座もとじにお招きし、初のぎゃらりートークを開催しました。
(6)2016年4月 松枝家の久留米絣 - 継承と展開|和織物語
2回目の個展に際し、多摩美術大学教授・外舘和子先生に取材・執筆いただきました。
(7)2016年4月 久留米絣 松枝哲哉・小夜子~松枝家の藍を纏う~
人類最古の染料といわれる藍は「人が一生をかけるのにふさわしいもの」と語る松枝夫妻。「藍」への思いを語られています。
(8)2016年4月 久留米絣 松枝哲哉・小夜子~ふるさとを織り込む、伝える~
松枝夫妻が地元の小学生にボランティアで行っている「藍の生葉染め」の課外授業を通して子供たちに伝えたい思いについて伺いました。
(9)2020年 松枝哲哉さん・松枝小夜子さんからのメッセージ
弊社40周年の記念展へ寄せていただいただきました。松枝哲哉さん・小夜子さんの久留米絣への思いが深く伝わってきます。(2020年7月、松枝哲哉さんはご逝去されました)
松枝家の久留米絣について
「松枝家」は、150年間にわたって絵絣の技を継承する久留米絣の名家。3代目である故・松枝玉記(たまき)氏は久留米絣の分野で国の重要無形文化財保持者(人間国宝)となりました。
久留米絣は、八女地方の小柄な男絣と、久留米市南部の大柄な絵絣の2種に大別されますが、松枝家に伝わるのは後者の「大柄な絵絣」です。
筑後の自然風景、風や雨や光や影、そして宇宙にまで思いを馳せ、絣紋様に意匠化して写し取ります。豊かな詩情あふれる世界観を藍と白のコントラストや藍の濃淡染めで表現した作品は、見る者に深い感動を呼び覚ます力強さを感じさせます。
松枝哲哉氏 プロフィール
1955年、福岡県生まれ。久留米絣の名家・松枝家の5代目当主。人間国宝であった祖父の松枝玉記さんに中学時代より藍染めを習い、後に手織り・手括りを学び、24歳の時には重要無形文化財久留米絣技術伝承者(手括り・藍染め・手織)に認定。詩情あふれる絵絣模様を得意とされ、29歳の時に日本伝統工芸展初入選、以降多数入選。2020年、第67回日本伝統工芸展で文部科学大臣賞を受賞、同年7月にご逝去されました。
松枝小夜子氏 プロフィール
日本工芸会正会員
1956年、熊本市生まれ。故・松枝哲哉さんの奥様で、ご子息・松枝崇弘さんとともに、工房「藍生庵(らんせいあん)」を引き継がれました。芸術大学卒業後、重要無形文化財「紬縞織・絣織」保持者の宗廣力三氏の作品に出合い染織の道に進むことを決意。宗廣氏が主催する郡上工芸研究所での修行を経て、1985年、哲哉さんとの結婚を機に久留米絣の道へ。松枝家の伝統を受け継ぎながら、時には絣の曲線を端正に織り出す空間性あふれる作品で、凛としなやかな、現代に息づく久留米絣を手がけられています。2012年日本伝統工芸染織展日本経済新聞社賞受賞、他入選多数。
松枝崇弘氏 プロフィール
1995年、福岡県久留米市生まれ。7歳でお父様から藍染めを、10歳でお母様から機織りを学び、幼い頃から染織に親しんで育つも、大学卒業後は一般企業に就職。お父様・哲哉さんがご病気になられたのをきかっけに本格的に家業へ入り、父から子への松枝家の技術伝承は動画等を駆使して病床からも行われ、濃密な修行期間を過ごされます。お父様のご逝去後、2021年に日本伝統工芸展へ初出品・初入選、「日本工芸会奨励賞」受賞。幼少期より短歌を嗜み、小学3年生で詠んだ歌『クワふれば ミミズはじける土のうね ひとさし指で 藍のたねまく』が国民文化祭で選抜されるなど入選多数。
久留米絣とは《国の重要無形文化財》
福岡県久留米市周辺で作られる絣模様の綿織物で、19世紀初めに12才の少女・ 井上伝によって生み出されたとされます。藍の濃淡と白のコントラストが美しく、丹念に織り込まれた絣模様と、丁寧に染められた藍色が醸し出す温かな風合いが魅力。日常着として愛されてきましたが、長い歴史の中で技術と文様が練磨され、絣織りの最高峰として価値を高め1957年には国の重要無形文化財に指定。指定条件は次の通り。(1)手くびりによる絣糸を用いる。(2)純正天然藍で染める。(3)投げ杼による手織。