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野趣と洗練「草木染の結城紬」への挑戦《奥順さん寄稿》

「次の展示会では『草木染の結城紬』を作りましょう!」

奥順さんと共に結城紬の新たな可能性を探り、手塩にかけて製作いただいた10数反が一堂に揃いました。

遡れば、店主・泉二啓太が「新しい出会いから、どんな化学反応が起こるだろう」と、草木染色家・山崎広樹さん、染織家・柳晋哉さんと共に結城紬の産地を訪問し、交流の中から奥順さんが閃きを得てくださり、今回の作品展として結実したものです。

昭和以降の絣の精緻化は、化学染料でなければ表現不可能な域に達し、現在は一部の藍染めを除き、天然染料の結城紬はほぼ見ることがなくなりました。
超絶的な絣を極めた時代を経て、令和の今、上質なゆらぎを味わう新しい時代の結城紬が誕生しました。

なぜ今、草木染の結城紬なのか。
奥順さんによる企画の背景を以下に掲載させていただきます。作品とともにぜひご覧ください。

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野趣と洗練
「草木染の結城紬」への挑戦

背景

結城の産地では、天然染料による染めはあまり発展してきませんでした。
手つむぎ糸、地機という、極めて原始的な技術を残しながら、染料については天然染料を使用していないことに驚かれることがあります。

江戸時代から昭和初期まで男物の縞の時代には、藍染めがほとんどでしたが、その後絣の技術が広がるにつれて、化学染料へと移行していきました。絣はどんどん精緻になり、天然染料の出番はますますなくなっていきました。

原始的な素材や道具を用いながら、横段やたて筋といった「味わい」を極力許さず、人為的な絣の精緻化を目指す、というのが結城紬の辿った歴史です。素材という自然にとことん手をかけ、いかにゆらぎを抑えて洗練させるか、というのが職人のしている仕事です。今さら天然染料という不確定なゆらぎを新たに加えるというベクトルが働かなかったのは当然かもしれません。また、そこまで細かくなった絣を天然染料で染め抜くのは不可能でした。
ただ一部の職人は天然染料による染めを続けていました。

※現在、結城紬で草木染をしているのは大久保雅道さんと田中茂梨さん。本展の草木染作品でも糸染めをしてくださいました。お二人についてはこのページ下部でもご紹介しています。

企画趣旨

結城紬にとって天然染料はまだまだ開拓の余地があるものです。手つむぎ糸、地機織りと、草木染という織物にとって原初的な方法の組み合わせが、まだあまり日の目を見ていないのは考えてみたら不思議なことです。銀座もとじさんが引き合わせてくれた、大久保さんと山崎さんの出会いを機に、「草木染による本場結城紬」の可能性を探る展示会を着想しました。

結城紬とその素材である真綿にとって、草木による染めとの相性が、少なくとも見た目に良いのは間違いないと思います。共にゆらぎがあってやわらかいという特徴があるからです。ただし職人はゆらぎを抑えるために懸命に仕事をすることになります。野趣がでることは、職人にとっては技術の不足を意味してしまうからです。
これは工芸にとって自然とは何か、という重要な問いにもつながる事だと思います。

「草木染の結城紬」
染め屋さんのご紹介

大久保染店5代目
大久保雅道さん

現在、結城紬産地において伝統の『正藍染』を手がける唯一の染屋。
藍以外にも、化学染料全盛の産地において、思川(おもいがわ)桜染をはじめとする草木染を積極的に導入。また、後継者の育成にも力を入れている。
市内小中学校においては藍染体験など、染色に関する授業を行う。
テレビ各局、ラジオ、新聞、雑誌など幅広くメディアからも取り上げられる。

昭和32年 栃木県小山市生まれ
昭和51年 栃木県足利工業高等学校 色染化学科卒
     大久保染店5代目として家業を継ぐ
~53年  茨城県工業技術センター繊維工業指導所において染色及びデザインの研修
昭和60年 栃木県産業技術センター紬織物支援センター非常勤講師
平成6年   結城紬染色部門 伝統工芸士に認定
     本場結城紬染色工業組合 副理事長
     本場結城紬検査協働組合 理事
平成10年 小山市生涯学習講師登録
平成15年 結城紬伝統工芸士会 理事
平成16年 草木染の技法により『思川桜染』を完成 商標登録
     『思川桜染』小山ブランドに認定
平成19年 下野手仕事会 会員
      栃木県本場結城紬織物協同組合 理事
平成24年 本場結城紬伝統工芸士会副会長
平成28年 本場結城紬伝統工芸士会会長


本場結城紬 地機「矢鱈縞」 染料:矢車/五倍子/クルミ
図案:奥順デザイン室

【工房コメント】シンプルな細縞に見えますが、縞糸には草木染で濃淡三色の茶を用い、単調なくり返しでなくランダムに見えるように縞割りを計算しています。結城の手つむぎ糸にはそもそも自然なゆらぎが備わっていますが、そこに草木染による複雑な色相と、設計による人為的なずれを加えることで、何でもなさそうで実は見たことのない縞ができるのではないかと思い、制作しました。

草木染作家
田中茂梨(しげり)さん

昭和15年1月1日、東京生まれ。
父親の仕事の影響で幼少の頃から染織工芸品に親しむ。

長い間、自分の理想とする織物を探求し続け、糸・製法・風合いなど、
全ての工程が手仕事でつくられる結城紬に魅せられる。

そして、独学で本場結城紬の製作技術を習得。
天然素材の真綿糸、そして手仕事だけでつくられる結城紬なので、
染料も天然のほうが合うと考え、
草木染の研究を重ね、現在までに、本場結城紬の草木染ならではの奥深い作品を発表する。


本場結城紬 地機「縞 茶濃淡 小石丸使用」 染料:胡桃/五倍子/ラックダイ

【工房コメント】薄茶と鼠の太縞を、ラックダイによる薄紫の細縞で等間隔に区切っていくことで、輪郭をもった独特の縞模様があらわれます。それぞれの色が輪郭をもつことで、色の対比がより意識的に感じられます。また細縞に使われた紫が周囲に染み込んでいくかのように、全体が紫みを帯びています。滲むような色合いは草木ならではと思わされます。古い外国の縞にみられるような縞割で、どことなく異国情緒が感じられます。

※「小石丸」は、日本最古の繭の品種のひとつです。糸自体が細い繊維であることから、糸をつむぐことにも心配りがも求められます。


やわらかで奥深い染め色の階調は、手仕事の軌跡をより鮮明にし、人の手と知恵と技によるものづくりに思いを馳せることができます。草木染の結城紬 限定10数反を新作の本場結城紬と共にご紹介します。
是非この機会をお見逃しないよう、御覧ください。

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会期:2025年2月7日(金)~2月9日(日)
会場:銀座もとじ 和織、男のきもの、オンラインショップ
〈お問い合わせ〉
銀座もとじ 和織・和染(女性のきもの) 03-3538-7878
銀座もとじ 男のきもの 03-5524-7472
(電話受付時間 11:00~19:00)

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インスタライブ開催決定!

店主・泉二と、結城紬をこよなく愛するスタッフが、結城紬の歴史や魅力、今回の結城紬展の見どころ等をご紹介いたします。 ぜひご視聴くださいませ。

2月1日(土)20時~
銀座もとじ公式アカウントにて
@ginza_motoji

ぎゃらりートーク

奥順株式会社 奥澤順之社長をお招きしお話を伺います
日 時:2月8日(土)10~11時

会 場:銀座もとじ 和織
定 員:40名様(無料・要予約)【開催終了】

奥順株式会社 奥澤順之社長 在廊

2月7日(金)~2月9日(日)
全日11時~18時

結城紬とは

Movie:Yuya Shiokawa

鎌倉時代から安土桃山時代にかけ、領主・結城氏が織物の育成に努めたことからその名がついたといわれる結城紬。現在は茨城県結城市を中心に、茨城県から栃木県にまたがる鬼怒川沿いの約20 kmの一帯で作られています。
真綿(繭を煮て引き伸ばし袋状にしたもの)を撚りをかけずに紡いで糸にし、手織りで織り上げる伝統的な技法が守られており、地機で織られたものについては1956年に国の重要無形文化財に指定。また、撚りをかけない糸で作られる布は世界でも珍しく、その技術の文化的価値から2010年にはユネスコ無形文化遺産として登録されました。
糸が空気をたくさん含むためにあたたかく、ふっくらとした手触りと包み込まれるような優しい着心地。
着るほどに肌になじみ、長年かけてのその味わいの変化をじっくりとご堪能いただきたい織物です。

結城紬の詳しい情報

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