絣の模様は、縦方向の糸をあらかじめ括ってから染め分けて織ったものを「経絣(たてがすり)」、横方向の糸を括ってから染め分けて織ったものを「緯絣(よこがすり)」と言います。経糸も緯糸も括って織るものを「経緯絣(たてよこがすり)」といいます。
何千本という細い糸が、縦方向と横方向に機にかけられたものを、針の先ほどの小さな点のレベルで、絣柄を合わせて織って行くことになるわけですので、その制作工程から機織りの段階まで、大変緻密で高度な技術を必要とします。
また、その「経緯絣」は、交差した箇所の糸の重なりにより、あらたな色の表情が生まれ、絣の力強さが表れます。
この複雑な織物である「経緯絣」、実は世界でも、絣の起源と言われるインド、インドネシアのバリ島、そして日本のたった3か所でのみ、織られている織物です。
インドでは、グジャラート州、オリッサ州、アンドラプラデッシュ州の3か所、バリ島では、トゥガナン(テンガナン)村の一か所のみに留まりますが、なんと日本では、東北から沖縄まで各地で経緯絣が織られています(結城紬、備後絣、芭蕉布、大島紬など)。
とくに、奄美大島では、地理的にも比較的近いバリ島とは気候風土も少し似た雰囲気があり、そしてインドからも中国を伝って、文化や物資が伝播する玄関口となっていた南方の島々には何らかの直接的な影響が様々にあったと考えられます。
下記の写真は、各地の経緯絣の織物です。全体の構図、ひし形の紋様、花の紋様、どことなく似ていませんか。
歴史という時間軸の中で、共通点やつながりが浮かび上がってくる染織の世界は、本当に面白いものですね。
インド(グジャラート州) 「パトラ」
インドネシア(バリ島)「グリンシン」
日本(奄美大島)「大島紬 龍郷柄」
※画像提供:東京国立博物館