2011年10月6日(木)〜10日(月・祝)まで、銀座もとじ「和織」「男のきもの」にて開催した『織楽浅野展「創発」』。
10月8日(土)には、京都西陣の機屋・織楽浅野の代表、浅野裕尚さんをお迎えして、ぎゃらりートーク開催させていただきました。
『創発』にかける想い
浅野裕尚さんが作られた「創発」の資料
今回、代表の浅野裕尚さんが選んだテーマは『創発』。 その言葉について、以下のように記してくださいました。
日々、創造的でありたいと願う私の今回のタイトルは「創発」。経糸を上下させ、選んだ素材を緯糸として織りこむ構造的な紋織物の中に、
計り知ることのできない美しさを創り出す。それはまさしく「創発」の言葉に重なります。
そしてモチーフは正倉院から現代まで、
仏・英・伊・韓の美術館で撮影した資料など…様々な思いを形に。 ― 浅野裕尚
今回、浅野さんはスライドをご持参くださり、ものづくりの“発見”のヒントとなるさまざまなものを見せてくださいました。 「今日は、手品のタネ明かしみたいなものです。織楽浅野の帯がどのようにして生まれるのか、それをお伝えしたいんです。」 スライドで次々と映し出されるのは、世界中の“デザイン”。そのものの完成形というよりは、もののある一部分を切り取ったものがほとんどです。これらは浅野さんが外国の美術館や世界中の街中で撮り貯めてきたもの。 外国の美術館は写真撮影がOKのところが多いので、平気で2、3時間、美術館で撮り続けることもあるそうです。 「デザインが、僕に“帯にしてほしい! ”って訴えてくるんですよ」と仰る浅野さん。
浅野裕尚さんが制作くださったスライド
たくさんの“発見”のヒントたち
たくさんの“発見”のヒントたち
「和紙」の表情の違い=織楽浅野の目指す織表現の世界
「和紙」の表情の違いを 織楽浅野は織り分ける
デザインが決まると、次は織組織の中で何を選んで創り上げるか。それがとても重要だと仰います。 そこでいつもお話くださるのが、「和紙」のこと。 「僕は、この「和紙」の表情の違い、それが表現し分けられることが、織楽浅野の目指す織表現の世界だと思っています。」会場のお客様にはそれぞれ3種類の和紙が手渡され、手触り、色、奥行きをいつも体験していただきます。日本の白は、現代の西洋の白ではなく、ちょっと生成りおびた色。でも「和紙」には素材がさまざまあり、楮、三椏、雁皮など、原料の繊維の重なり方によってその色味や質感が異なります。
織楽浅野の帯は、全くの白、全くの黒、というものがありません。どの帯にも、いくつもの日本の白、日本の黒を織りこみ、さらに織組織の違いを複雑に使い分けることで、帯地に陰影を生み出します。これは織楽浅野の帯を見比べると驚くほどわかります。同じ色糸でも、織組織が違うだけで全く印象が違うのです。
ものの色というものは、光を受けて、その光線が布目、糸一本一本の織目の凹凸にまで入り込み、色が発せられ、それが私たちの目に届いているのだ、ということを実感させられる帯。浅野さんの審美眼で選び抜かれた意匠が、絶妙な織の陰影で演出される。
同じ色糸でも、
織組織の違いでこれほど違う
織組織の違いでこれほど違う