「織五省」
工房には、3台の機が並び、平山先生のもとに学びに来られているお弟子さんに身近でご指導をされながら、染織の仕事をされていらっしゃいます。
平山さんは、20歳の頃に、ふとしたきっかけでラジオから流れた恩師、人間国宝 宗廣力三先生の「織は人なり 人は心なり」という言葉を耳にしました。これが平山さんと織物を結びつけ、岐阜県の郡上へ修業に行く決心をするきっかけとなり、
上質な絹糸で織られる農民たちのきもの−郡上紬
郡上では、千年以上も前から「曾代絹(ひだいぎぬ)」と呼ばれる、伊勢神宮の神職の装束を織る糸と定められていたほど良質な絹糸の生産地であり、農民たちはその絹糸の生産の際にでる屑繭をつむぎ、自家用の紬を織っていたという歴史があるそうです。その郡上紬の技術と文化を再興させたのが、農業開拓者としてもすぐれた活動をしていた宗廣力三氏です。 郡上紬は、そういった歴史の上にあり、絹や草木の命をいただき、大地の恵みを大切にしながら身に纏うものを織りあげた、農民たちの着物でした。素朴な草木染めの絣糸で織りあげられた色彩世界とシンプルな縞や格子の絣の意匠、上質な絹糸の光沢感が特徴の織り物です。
宗廣先生は、郡上紬の復興・再生のなかで、シンプルな縞や格子の絣模様から半円つなぎ文、丸文、波文、立湧文などの絣合わせも織りも複雑で高度な技術なくしてはなしえないような緻密な意匠へと発展させていきました。平山さんご自身もそういった極めて高い技術を自分のものとして身につけられてきました。
「織は人なり 人は心なり」
平山八重子さんの工房をたずね、いろいろなお話を聞かせていただく間、こんなに高名な実力ある作家さんなのに、なんと気さくで優しく明るい方なのだろうかと、その人柄にも魅了されてしまいました。そんな魅力的なお人柄の平山さんにお会いし、そして平山さんの作品をあらためて目にすると、「織は人なり 人は心なり」という言葉の意味が体感的に伝わってくる感じがいたします。 銀座もとじ店内でご覧いただける作品からは、織を通じて平山八重子さんの心が語りかけてくる物語が聞こえてくるかもしれません。ぜひ、耳を傾けに足をお運びいただけたらと思います。
左上下写真3点:作品を織り始める前の貴重な設計図を見せていただきました。
右上中下写真3点(上から):平山さんの長年の仕事道具である杼。管巻きを用いて横糸を巻きつけた管を杼に入れたところを見せて下さいました。染めにつかう植物の夜叉五倍子(やしゃぶし)、プラチナボーイの壁糸(かべいと)
参考文献:「すぐわかる染め・織りの見分け方」東京美術
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右上中下写真3点(上から):平山さんの長年の仕事道具である杼。管巻きを用いて横糸を巻きつけた管を杼に入れたところを見せて下さいました。染めにつかう植物の夜叉五倍子(やしゃぶし)、プラチナボーイの壁糸(かべいと)