小紋師・藍田正雄
日本工芸会正会員。群馬県高崎市に工房を構える江戸小紋師。2009年の日本伝統工芸展では、 弟子として育てている藍田愛郎さん、菊池宏美さんとともに3名で入賞を果たし、自身の作品制作と同時に 後継者育成にも確実な結果を残している、江戸小紋の第一人者です。
そんな藍田さんがこの10年間、ライフワークとして取り組んできたのが、江戸小紋の型紙となる“伊勢型紙”の保存・育成事業です。
江戸小紋の着物に加え、今回は特別に、プラチナボーイに染め上げた長襦袢や鼻緒、そして塩瀬半襟、ショール、など、 今までの藍田正雄さんの江戸小紋作品ではまずありえなかった“小物”までも制作いただきました。
職人たちが相向き合う真剣勝負の手仕事リレー。 今回は伊勢型紙の故郷、三重県鈴鹿市白子町へ、4種5人の型紙師たちの仕事の現場を訪ねました。
そもそも『伊勢型紙』って何?
産地:三重県鈴鹿市白子町が中心 用途:型絵染をするための型紙。江戸小紋に限らず、浴衣、振袖、小紋など 素材:「渋紙」(柿渋に浸した紙)を3枚重ね(縞柄は4枚が1セットで彫った後に2枚に剥がして間に糸入れします)たものを1つの型紙として使用。彫るときはそれを5セット、こよりで端を留めてまとめて彫ります。伊勢型紙の種類は4つ
突彫り
錐彫り
道具彫り
縞彫り
伊勢型紙の作り方
紙縒で渋紙を留る
小本を墨で写しとる
彫る
完成!
伊勢型紙の職人たち 〜それぞれの技術の紹介〜
伊勢型紙 突彫師:内田勲
最も古い技法で、型地紙を数枚重ねて穴板という板の上に置き、垂直に突くようにして、小刀を地紙から離さずに 曲線、折線を彫ることから小紋・中形など絵柄模様を彫るのに適している。 使用される小刀は、幅約3mm、厚さ約1mm、長さ約15cmの鋼に刃を付けたもの。
突彫り
やわらかい曲線を表現できます
やわらかい曲線を表現できます
柄を頬で支えてくりぬくように彫ります
桜の穴板この穴の上の空中で突きます
職人の仕事場
伊勢型紙 錐彫師:宮原敏明
小さな丸の連続によって図柄が構成されている小紋型に用いられ、技法では「鮫」「行儀」「通し」等の種類がある。 刃先が半円形の彫刻刀で、あて場に両ひじを固定して型地紙に垂直に立てて、小刀を右回りに1回転ちょっとくるりとさせて丸い穴をあける。
錐彫り
大小の丸模様だけで柄を作ります
大小の丸模様だけで柄を作ります
指で一回転ちょっとくるりと回して彫ります
切味が命U字刃の大きさ毎に
研ぎます
研ぎます
職人の仕事場
伊勢型紙 道具彫師:兼子吉生
小刀自体が、桜・菊などの花弁のようにひとつの文様に作られており、ひと突きで彫り抜く。 右手で道具の刃先を持ち、左手は柄をしっかりと握り、柄尻を右のほほに当て、刃先を型地紙に垂直に立てて 彫り抜く。職人は図柄にあった道具作りをし、その出来栄えが作品を左右する。
道具彫り文様毎に型を作ります
頬で柄を押すように体で力を入れて彫ります
3代に渡って作った道具6000本棚にびっしり
職人の仕事場
伊勢型紙 縞彫師:佐々木正明・坂哲雄
小刀と鋼の定規を使って、縞柄を彫る。単調な作業のように見えるが、線がわずかにずれても柄に狂いを 生じてしまう難しい技法である。縞柄には、3cm幅に彫られる縞筋の本数によって名前が付けられている。
縞彫り
糸入れをした状態です
糸入れをした状態です
鋼の定規を当ててすっすっと彫ります
ここから端を切落し糸入れをしてやっと完成
職人の仕事場