岩井香楠子さんには2008年8月『銀座もとじ ぎゃらりー泉』にて展示会をお願いしています。 今回のお話は少し急だったので驚いたそう。「今回はお誂えメインでご相談させていただきます。 お客様とお話するのは大好き!すごく楽しみです。」 新しい作品も現在創作中。構想中のたくさんの図案も見せていただきましたが、 どんな作品に仕上がるかは当日までのお楽しみです。「次の季節に向けて、 今回はクリスマス柄もご紹介する予定なので、ぜひ楽しみにしてくださいね。」
横浜の丘の上の見晴らしの良い場所にある岩井さんの『香南染工房』。 開放感のある新しい工房は昨年建て替えたもの。「以前の工房は古い家屋でとても雰囲気があって 大好きでした。けれど老朽化でどうしても取り壊さなければならなくなってしまって。 でもどこかに残したくて、建材の板を今は生地を張る紐をくくりつける板として使っています。」 工房のまわりにはたくさんの花草が。岩井さんの作品があふれたようなとても素敵な情景です。
岩井さんはまた、旅も大好き。毎年、海外旅行へ赴きます。 「新しい刺激をもらうためには旅が一番!」最近はトルコのイスタンブールに行って、建物の装飾や 色使いに「ドキリッ」としてきたそう。 「旅じゃなくても、いつもメモと着物の雛形は持っていて、電車の中や道で素敵なものを見つけたり、 思いついたらすぐに書き留めています。」岩井さんの宝のメモ。目をきらきらさせて街を歩く姿が 目に浮かびます。
工房にはお弟子さんが4人いて、中には『銀座もとじ』で岩井さんの作品を見て弟子入りを決めた女性もいます。 みなさん本当にとても仲が良さそう。「私は弟子にはとっても恵まれているんです。みんないい子ばかりなの。」 岩井さんは私たちにも丁寧に作品の制作工程を教えてくださいました。
弟子たちもそれぞれ個性があるの。紅型を学んできた人は小さな刀で押し進めるように彫るし、 大きな刀ですいすいとのびやかに彫る人もいる。」「とにかくみんな彫るのは大好き。 型絵染めをやっている人はたいていそうみたい。とっても楽しいの。みんな必ず自分で彫ります。」 「私は彫りたいために図案を描くくらい。」
型が出来上がると、次は染めです。生地の上に型を置き、もち米で作った糊をハケでのせて防染を繰り返して 多色を染めます。「私が使っている色は6つだけ。水色、藍色、ピンク、黄、茶、黒。これを豆汁(ごじる)でといて、 混ぜ合わせて、様々な色を作り出します。豆汁は、毎日前日から冷蔵庫で水につけて大豆をふやかせておいて ミキサーにかけて作ります。だから染料は半日しか持ちません。」
洗いは中腰でするのできつい仕事ですが、 染めにとってはとても大切なことです。「どこの工房も、洗いがはじめ。ここで根をあげてしまう人も いっぱいいるんです。でも洗いが出来てやっと次に染めに行けるんですよ。」
職人の世界の厳しさは岩井さん自身も経験されてきたこと。岩井さんが着物の染めをはじめた頃は 着物需要の最盛期でとにかく人手が足りないという時代。面接に行ったらその場で「描いてみろ」と 見本もないまま生地を渡され、「まだ描けないのか」と怒鳴られながら必死に仕事をしました。