泰明小学校『銀座の柳色に染まった一日』
銀座の柳色に染まった一日 ~泰明小学校「柳染め課外授業」から~
反物に描かれた生徒さんの絵
銀座で唯一の小学校、泰明小学校での「銀座の柳染め課外授業」のメインイベント、「染め」の実習が行われました。
2週間前の校庭の柳の剪定、1週間前の講義での「銀座の柳の歴史」や「柳染めの経緯」「柳染めの方法」の座学を経て、いよいよ染めの実践です。
当日は梅雨の走りを思わせる今にも泣き出しそうな空模様。従い、屋外での実習は断念し屋内でとり行われました。
店主泉二以下、スタッフ7名と、染色家の仁平幸春さん、そしてご父兄の方々のバックアップで迎えた染の実習。
染料となる柳は、勿論、2週間前生徒さんが剪定した泰明小学校の柳です。
この柳を2週間、銀座もとじ四丁目の店舗前で、銀座もとじのスタッフが交替で様子をみながら毎日、朝から晩まで煮出しました。
そして、媒染剤として用意したのは、銅、アルミ、チタン、奄美の泥(=鉄)。この鉄分豊富な奄美の泥は、泥染めの大島紬には欠かせないもの。この日の為に、奄美大島から空輸しました。
さぁ、いよいよ実習の始まりです。課題は、~反物に手描き染め~ハンカチの絞り染め~です。
~反物に手描き染め~
今回用意したのは、5年生一クラスに一反ずつ、計2反。泉二が柳の染液で下染めして準備した反物にクラスの生徒全員が思い思いの絵を描いて行きました。布地に直に絵を描くのは初めての体験。 4種の染料を入れた紙コップを抱え、予め描いてきた図案を手に、一生懸命に絵筆で格闘する姿は微笑ましく。柳を描いたつもりが椰子の木になってしまったり、色を重ねているうちに、布面いっぱいに塗りたくってしまったり。
「ねぇねぇ見て見て!裏側からみると、とっても綺麗だよ。」の声に、 反物の裏から仰ぎ見ると、描かれた絵が明るいパステル色に映って見え、こちらの方が新たな発見をさせてもらった場面もありました。 こうして楽しくにぎやかに作業は進行しました。クラス全員参加による手描き染めは、最後に担任の先生と校長先生の筆による絵が加わり、終に完成致しました。
これを泉二が預かって帰り、最後の仕上げを施して6月下旬には泰明小学校にお届けに上がります。
~ハンカチに絞り染め:
泉二がプレゼントした白ハンカチ2枚に、生徒さんがビー玉やスーパーボールを使って輪ゴムでくくったり、洗濯バサミを使ったり、縫い締めをしたり、それぞれが思い思いに絞ってきたものを柳の染液につけ、予め決めておいた媒染液につける。この作業を3回繰り返すことで、白いハンカチはみるみるうちに、柔らかい、黄色やオレンジ、茶鼠に変化しました。そして、ちょっぴり期待と不安をつのらせて、くくったところをはずしてみると、さてさて、その部分が白く文様を描いて浮き出てきました。
「うわぁ、きれい!」 「やったぁ!」 生徒さんの顔が喜びと感動で輝く瞬間です。
今年で6回目を迎えるこの授業は、 「柳染を通して命あるものを大切にして欲しいことと、自分達が育った銀座に愛着をもって欲しい」という、泉二の願いが込められたものです。
2時間に亘る授業の最後に、「この1年間5年生のためだけに育った柳の命が染液の中に溶け込み、みんなのハンカチにしみ込んでいます。世界に一つしかないハンカチです。」との泉二の言葉に、小学生は素直な笑顔で頷き、自分の手で一生懸命染めたハンカチを宝物のように抱えて帰りました。
一枚は、自分の宝物として、 もう一枚はプレゼントとして大切な誰かのお手元に?
校庭の銀座の柳で染めたハンカチが、いつしか小学校時代の楽しいひとときを包む思い出として、又、傍らにある自然や小さな命を大切にする心を映し出す手鏡として、生徒さんの心に刻まれてゆくことを願いつつ、泰明小学校を後にしました。