この度の「高橋寛 喜寿記念展」を祝して、高橋寛さんに縁が深い皆様よりお祝いのメッセージが届きました。
高橋寛さんは、(公社)日本工芸会の理事、さらに東日本支部の幹事長も務められ、工芸会のために尽力されるとともに、作家皆様の弊店での個展の際には度々駆け付け見守ってこられました。
また、工芸展の鑑査委員でもある多摩美術大学教授の外舘和子先生は、2017年初個展の際に「和織物語」を執筆いただき、ぎゃらりートークへもご登壇。寡黙な高橋寛さんの隣で、作品の魅力や見どころを言葉を尽くしてお話しくだいました。
関東近郊の染織を共に盛り上げて来られた皆様からの温かい言葉を、ぜひご覧いただけましたら幸いです。
外舘和子先生からのメッセージ
喜寿になられたとのことおめでとうございます、外舘です。
ダブル・ラッキーセブンですね。
私も今年、早くも還暦です。
以前『中村勝馬と東京友禅の系譜―個人作家による実材表現としての染織の成立と展開』(染織と生活社、2007年)という本の執筆のために色々調べていた折、重要無形文化財「友禅」保持者・中村勝馬に弟子入りしていた頃の初々しい高橋寛さんの写真を雑誌で見つけ、偉大な作家のもとから、新たな実力ある作家がこうして育っていくのだと感慨深く思ったことを覚えています。
筒で糊の点描を行うという師の手法を受け継ぎつつ、師とは異なる抽象的で粋な友禅表現を展開させてきた高橋寛さんの仕事ぶりが益々充実していく事を楽しみにしています。
(多摩美術大学教授・外舘和子)
外舘和子先生が執筆された「中村勝馬と東京友禅の系譜」。
明治期以降の東京友禅の発展や、人間国宝・中村勝馬氏や師弟の作品の特徴などが詳らかに記されています。高橋寛さんの当時の作品も見ることができます。
2017年に外舘和子先生に執筆いただいた和織物語「糊の点描と線描-高橋寛の友禅の粋」を以下より全文ご覧いただけます。
人間国宝・松原伸生氏からのメッセージ
高橋寛先生
喜寿記念展開催おめでとうございます。
すでに40年近いお付き合いをさせていただいていますが、初めてお会いした時から今も変わらぬお姿に敬服しています。
日本が世界に誇る友禅染の技法のなかでも、現存する最も正統な技術を継承され、長年に渡って作品を発表し続けていらっしゃる姿勢は、後人の私たちにとって指針となっています。
喜寿を迎えられたいまでも、作品づくりに対する思い、「本来の友禅」に対する思いは益々お強くなられているように感じています。そのことは若い人たちへの技術伝承、制作姿勢への考え方を説かれる横顔を拝見するたびに確信することができます。
今後はご自身のお体をいたわりつつ、なお一層のご活躍を願っています。
銀座もとじでの記念展のご盛会をお祝い申し上げます。
松原伸生
萩原いづみさんからのメッセージ
喜寿の記念展、おめでとう御座います。
寛さんとは、工芸会入会前からのお付き合いで、もう60年になります。私の父の弟(おとうと)弟子で,中村勝馬先生に教えを受けていましたね。
真面目で、優しく、怒った所など見たこともない為,今でも皆んなから親しまれているのだと思っています。
作品は、勝馬先生の流れを受け継ぎ,関西とは異なり如何にも関東風で色数も少なく糸目のりを使用し、スッキリとしたデザインで仕上げた作品が多く見られます。
好みに合った方は,滅茶苦茶好きな事と思います。
これからもお体を大切に,お客様の喜ぶ作品作りに頑張ってください。
萩原いづみ
菊池宏美さんからのメッセージ
「高橋寛 喜寿記念展」誠におめでとうございます。
師である藍田正雄先生の元での修行時代、
先生から“寛ちゃん”と親しみ深く呼ぶ声を幾度も耳にしておりました。
自身が工芸展に出品する頃は、高橋寛氏は日本工芸会東日本支部染織部会の長、
さらに日本工芸会東日本支部幹事長として工芸会を牽引されておりました。
その中でも、私たち若手に温かく言葉を掛けてくださいました。
恐縮にも、2016年銀座もとじでの自身の初個展がきまり、
重なっていた染織部会の仕事の免除のお願いに快く対応して頂き、何とか作品を作り上げる事が出来ました。
個展初日ギャラリートーク当日、不安の中に高橋寛氏の姿がありました、どんなに心強かったことかわかりません。
工芸展で、様々な場面に登壇される高橋寛氏を見つめる全ての人の眼差しに、藍田先生の“寛ちゃん”を見るのです。
寛さん、喜寿記念展誠におめでとうございます!
菊池宏美
平山八重子さんからのメッセージ
高橋寛先生 喜寿おめでとうございます。
いつもご自分の気持をストレートにお話しする高橋寛先生。ざっくばらんな雰囲気は、廻りを笑顔で包んで下さいます。(でも、時によってはシャイな所もおありですが・・・)
長い間、東日本支部幹事長他、様々な役職に就かれて工芸会の運営に携わって下さいました。
第一人者として作品を造りながら、工芸会の仕事もなさっている訳で大変なご苦労と思います。
もうひとつ個人的な仕事として、東日本支部の友禅の仲間を中心に集まり、デザインの草稿会を主催して下さっています。出席者は自分のデザインや作品を持ち寄り、その一点一点の作品に対して誰でもが思った事を話し、意見交換をします。全く自分とは違う視点から作品を見ることもでき、新しい発見も多い事でしょう。
高橋寛先生の作品は糊の点描と線、それから地色の構成とでシンプルに造られています。その技法は「他の先生方と違う、自分の作品を造る為に考えたこと」とおっしゃっていました。
サラッとお話なさるけれど、作家にとって、それを見つける事は大変なことです。
祭り大好き、お酒大好き、高橋寛先生の粋な友禅は「江戸っ子」そのものだなあと思いました。
これからの作品も皆様とご一緒に楽しみにしています。
傘寿、米寿とお元気にご活躍なさいますようお祈り致します。
平山八重子
吉岡政江さんからのメッセージ
高橋 寛 先生
謹んで喜寿のお祝いを申し上げます。
友禅染め一筋に携わってこられた豊かな人生の一つの節目を迎えられますこと、心よりお めでとうございます。
日本工芸会の染織を支える立場としての長きにわたるご尽力に心から敬服しております。
寛さん(親しみを込めて、いつもの愛称でこう書かせてください)のリーダーの元で支部 運営のお手伝いが出来ましたことは、
まだ工芸会に入りたての私にとっては大きな喜びで した。
仕事は楽しく完璧に、飲み会は楽しく楽しく。 工芸会という偉大な組織の敷居を下げてくれたのは、まぎれもなく寛さんです。 また一年に二度、後進を育てる目的で草稿会と称し、図案の勉強会を自ら主宰されていま す。
染めに限らず、刺繍、織りに携わる多くの後輩を前に、4時間以上もの間、大変丁寧で的 確な指導をして下さいます。
その利他的精神に、後輩たちはどれだけ助けられていることでしょう。 心より深く感謝申し上げます。
この度は、銀座もとじでの「喜寿記念展」、誠におめでとうございます。
今後も益々ご活躍されますよう、そして変わらぬご指導、ご鞭撻を賜りますよう、どうぞ 宜しくお願いいたします。
吉岡政江
遠藤あけみさんからのメッセージ
髙橋 寛先生
この度は喜寿記念の個展開催おめでとうございます。
これまで、工芸会では委員長として長い間私たちをまとめ、引っ張っていただき本当に有難うございました。
誰にでも分け隔てなくお声をかけ、ベテランの方にも新しく入会した方にも居心地の良い場所を作って下さいました。私にとって寛さんは、友禅と型という異なったジャンルでありながら、作り手として目指すべき存在としていつも私の前にありました。
寛さんが第55回の伝統工芸展で受賞された「颯颯」という作品を会場で拝見したとき、大きな衝撃を受けました。
当時、私はまだ伝統工芸展に出品し始めたばかりで、自分がこれからどんな方向で制作してゆくのかと模索している時代でしたが、寛さんの作品の前に立った瞬間、びゅうと風の音が聞こえ空気が動いているような感覚に包まれて、着物でもこのような表現ができるんだと只々感動し見入ってしまいました。
以来、私もこんな世界を作れたらと夢見て、「雨の中に佇む」「風が吹き渡る」「匂いに包まれる」といったような、目に見えない表現を追いかけるきっかけになりました。
その後も寛さんの世界はより緻密で抽象化された品のあるものに変化し続けて私たちを驚かせて下さっています。
作り手として、これからも私にとっての目標であり続けてくださることと思います。
それから寛さんの歌が玄人裸足であることは皆さんの知るところですが、張りのある木遣りもいつまでも聞かせて頂きたいです。
こころよりお願い申し上げます!
遠藤あけみ
遠藤あけみさんは「第71回日本伝統工芸展」(2024年9月11日(水)より東京会場での展示会が開催)にて、型絵染着物「あすなろの森」が東京都知事賞を受賞されました。
生駒暉夫さんからのメッセージ
髙橋寛先生
この度は喜寿のお祝いと共に【銀座もとじ記念展】誠におめでとうございます。
私が工芸会に入会しましたのは40才の頃でした。
何も分からない事だらけでしたが同じ友禅と言う事で何かと気にかけていただき、いつも気軽に何でも教えていただきました。
あれから30年経ちますが、絶えず寛さんの背中を追いかけて来られた事に心より感謝しています。平成24年、今から12年前になりますが、寛さんから「友禅の人達を中心に図案の勉強会をしよう」と言う提案をいただきました。私も補佐役として今まで一緒にやって来ましたが、今では分野を問わず今年は7月に20名参加し中身の濃い研究会となりました。
これからも身体に気をつけていただき後20年ほどお願い致します。
生駒暉夫
四ツ井健さんからのメッセージ
高橋寛先生
喜寿記念展の開催、心よりお祝い申し上げます。
高橋先生とは工芸会がご縁で随分いろいろな事を学ばせて頂き大変感謝しております。
先生から「東京に来たら連絡しろよ。一緒に呑もうぜ。」と誘っていただき毎回呑みながら(これがいい)直球勝負の着物制作心得等の話を聞かせて頂く事がいつも励みとなり且つ勉強となっております。
デザインはもちろんですが、近年友禅染でとても重要な糯糊を作る勉強会を行って頂き中村勝馬先生、山田貢先生直伝のレシピを伝授して頂いた事が伝統を繋ぐ身の引き締まる機会となりました。
これからも高橋先生の益々のお活躍と健康を願い、私たち後輩へのご指導も宜しくお願い致します。
四ツ井健
髙橋寛先生×松原伸生先生【特別対談】
喜寿記念展の御祝いの対談動画を撮影しました。長板中形の人間国宝・松原伸生先生は、高橋寛先生と共に日本工芸会を支えてこられ「飲み仲間」でもあるとのこと。ふだん聞けないようなお話をたくさん伺いました。(30分程度の動画です)
01:05 高橋先生と松原先生との出会い、仲が良い理由
02:59 日本工芸会における高橋寛先生の存在
06:52 髙橋寛先生の作品の特徴と魅力
09:00 高橋寛先生が作品で表現したいものとは
11:04 二人の師 人間国宝の中村勝馬氏と山田貢氏について
18:05 「筒糊」による作品制作、「蒔糊」との違いについて
21:30 「真糊」と「ゴム糊」、不自由さの中でこそ生まれる表現
28:35 喜寿記念展へ向けての思い
第71回 日本伝統工芸展(令和6年)開催
2024年9月11日(水)より、 東京での開催を皮切りに全国11の会場で「第71回 日本伝統工芸展(令和6年)」が開催。 染織をはじめとする諸工芸7つの部門の伝統の技術を現代の感性で磨き上げた素晴らしい作品が並びます。お近くの方はぜひ足をお運びください。
もうすぐ髙橋寛 喜寿記念展《見どころをご紹介します》
髙橋寛 喜寿記念展 ~東京友禅の系譜 中村勝馬・山田貢を師に~
二人の人間国宝を師に仰ぎ、独自の友禅の美を創りあげた孤高の友禅作家。
糊の線描と点描、極限られた染め色だけで奏でられる意匠美で、具象・抽象の概念を越え、森羅万象の一刻を時に悠然と時に荘厳な世界観で染め上げます。
「作品を御覧いただければ」と、多くを語らない氏でありますが、初心を決して忘れることなく、実直に真摯に作品制作に向き合ってこられました。
プラチナボーイの新作はじめ、工芸展出品作品を一堂にご紹介します。
六十年の軌跡を是非御覧ください。
会期:2024年9月13日(金) ~16日(月・祝)
場所:銀座もとじ 和染、男のきもの、オンラインショップ
〈お問い合わせ〉
銀座もとじ和染 03-3538-7878
銀座もとじ男のきもの 03-5524-7472
(電話受付時間 11:00~19:00)
ぎゃらりートーク
日時:9月14日(土)10~11時
場所:銀座もとじ 和染
定員:40名様(無料・要予約)
作品解説
日時:9月15日(日)14 ~14時半
場所:銀座もとじ 和染
定員:10名様(無料・要予約)
髙橋寛さんの詳細情報
寒色系の色使いと幾何学的な文様がもたらすモダンさの中に、生き生きとした躍動と、どこか柔らかさやぬくもりが感じられる高橋寛さんの作品。 生地の上に無数にあらわれた点描は、蒔糊(乾燥した糊を砕いて使用するもの)による防染ではなく、筒糊からひとつひとつ糊を置いていくという気の遠くなるような手法によるもの。 点の密度の微妙な変化によって模様の面に立体感や奥行きがもたらされ、糊の線描と点描と地染め(引き染)の関係のみで表現される豊かな意匠性。 自然界とは無縁の幾何学的な要素のみでつくられているかに思われますが、具象・抽象の概念を越えて、水の流れ、風に揺れる枝などの「動き」そのものを表現しているといいます。
銀座もとじ和染 2017年、2021年個展開催
2015年 35周年記念展出品
2020年 40周年記念展出品
略歴
1946年 東京都に生まれる
1965年 中村勝馬(重要無形文化財保持者・友禅)に師事、内弟子
1977年~89年 日本工芸会文化財保存事業、「白麻地風景模様茶屋染帷子」復原委員
1990年~95年 日本工芸会工芸技術保存事業、「茶屋染・白麻地春秋草花舞楽模様帷子」復原委員
2007年 「展開する友禅五人展」(和光ホール)
2008年 第55回日本伝統工芸展 奨励賞
2015年 第62回日本伝統工芸展 奨励賞
現在 公益社団法人日本工芸会 正会員、監事
日本伝統工芸展、日本伝統工芸染織展、東日本伝統工芸展、鑑審査委員