【目次】
1.本場結城紬とは
2.「地機」と「高機」の違い
3.本場結城縮とは
4.本場夏結城とは
5.草木染の結城紬とは
1.「本場結城紬(ほんばゆうきつむぎ)」とは
「本場結城紬」とは、真綿手つむぎ糸を用いた手織りの結城紬のことで、織り方の違いにより「地機(じばた)」「高機(たかばた)」、糸の種類により「本場結城紬(秋冬の袷向け)」「本場結城縮(ゆうきちぢみ・春秋の単衣向け)」「本場夏結城(なつゆうき・夏〜春秋向け)」があります。
「紬の王様」とも呼ばれる「本場結城紬」は、空気を含んだ手つむぎの真綿糸をほぼ無撚糸の状態で織り上げているので、軽くて暖かい極上の着心地が魅力です。
昭和31年に国の重要無形文化財に指定され、多くの着物ファンを魅了する憧れの織物として知られています。撚りをかけない糸で作られる布は世界でも珍しく、その技術の文化的価値から2010年にはユネスコ無形文化遺産として登録されました。
3つの指定要件(1)真綿手つむぎ糸を用い、強撚糸を使用しないこと(2)絣模様を付ける場合は手くびりによること(3)地機で織ること 以上を満たしたものには「重要無形文化財指定」の証紙が貼られます。
重要無形文化財指定の証紙。また、手つむぎ糸による本場結城紬は「結」の文字が記されます。
※いしげ結城紬・・・時間のかかる糸づくりで真綿動力引糸を用いる等、結城紬の良さを生かしながら効率化をはかって作られたものもあります。証紙で見分けることができ、いしげ結城紬の証紙では赤い文字が「結」ではなく「紬」になっています。
2.「地機(じばた)」と「高機(たかばた)」の違い
結城紬の地機と高機の違いは、織り機・織り方の違いで、経糸(たていと)の固定方法が大きく異なります。地機は経糸が固定されておらず、織り手が腰を使って張力を調整するのに対し、高機は経糸が織り機自体に固定されています。
地機は最古の機織り機といわれ、国の重要無形文化財やユネスコ無形文化遺産登録の条件になっています。細い絣糸を丁寧に繊細に織りだしていくためには、糸に優しく、経糸のテンションを調整しやすい地機が用いられます。
また地機で織られる場合、独特の凸凹が生地の表面に生まれるのも特徴のひとつです。少し専門的になりますが、高機は2つの綜絖が同時に上下に動き、経糸が緯糸を包み込むように織られていくのに対し、地機の場合は綜絖が一つしかないので、緯糸が経糸を包むように織られ、緯糸の表情が表に出ることで豊かな地風を作り出します。
証紙の中に「地機」「高機」の文字が記載されています。
3.本場結城縮(ゆうきちぢみ)とは
結城縮は、強撚糸により生地の表面にシボの凹凸をつくることでさらりとした着心地を実現した、単衣仕立てで楽しむ「結城紬の縮織(ちぢみおり)」です。
本場結城縮 地機 草木染「縮織 微塵格子」(染料:矢車/五倍子)
「軽くて暖かい」結城紬に対し「軽くてほどよく涼やか」な結城縮は、気候の変化により単衣を着る季節が広がってきた現代に、大人の洗練された上質なお洒落を楽しむワードローブとしてぜひおすすめしたい着物です。
明治時代から昭和初期にかけて人気を博しながら、現在は技術の伝承が危機的状況にあり、大変希少な織物となっています。
撚糸の道具。糸に撚りをかける際、太さが均質でないと細い部分に撚りが集中して切れてしまうため、結城縮の糸は結城紬の糸以上に均質であることが求められます。
※2019年に結城縮を特集した展示会を開催。
和織物語「極みの単衣 本場結城縮」を公開しています。
4.本場夏結城(なつゆうき)とは
「夏結城」は、緯糸の約半分に「麻糸」を織り込むことで、結城紬の風合いを保ちながら、涼しさと透け感を実現した“極上の夏着物”です。
生産反数は年間10反未満、結城紬全体の1~2%、製織できる機屋はたった一軒「野村半平」のみ。まさに究極の通好みの織物です。
経糸と緯糸の約半分には、160亀甲絣に使われる極細の手つむぎ糸に若干の撚りをかけて使用し、さらに緯糸の約半分には「麻糸」を織り込むことで、結城紬の風合いを保ちながら、涼しさと透け感を出しています。そして何より驚きの軽さです。製織には本場結城紬と同じ地機を用います。
結城紬といえば暖かいもの。その常識をくつがえす反物です。
5.草木染の結城紬とは
実は、結城の産地では、天然染料による染めはあまり発展してきませんでした。手つむぎ糸、地機という、極めて原始的な技術を残しながら、染料については天然染料を使用していないことに驚かれることがあります。
昭和以降の絣の精緻化は、化学染料でなければ表現不可能な域に達し、現在は一部の藍染めを除き、天然染料の結城紬はほぼ見ることがなくなりました。超絶的な絣を極めた時代を経て、令和の今、上質なゆらぎを味わう新しい時代の結城紬が誕生しました。
草木染の本場結城紬 地機「無地 茶濃淡 小石丸使用」(染料:矢車/栗/檳榔樹)
野趣と洗練「草木染の結城紬」への挑戦《奥順さん寄稿》
やわらかで奥深い染め色の階調は、手仕事の軌跡をより鮮明にし、人の手と知恵と技によるものづくりに思いを馳せることができます。草木染の結城紬 限定10数反を新作の本場結城紬と共にご紹介します。
是非この機会をお見逃しないよう、御覧ください。
会期:2025年2月7日(金)~2月9日(日)
会場:銀座もとじ 和織、男のきもの、オンラインショップ
〈お問い合わせ〉
銀座もとじ 和織・和染(女性のきもの) 03-3538-7878
銀座もとじ 男のきもの 03-5524-7472
(電話受付時間 11:00~19:00)
インスタライブ開催決定!
店主・泉二と、結城紬をこよなく愛するスタッフが、結城紬の歴史や魅力、今回の結城紬展の見どころ等をご紹介いたします。 ぜひご視聴くださいませ。
2月1日(土)20時~
銀座もとじ公式アカウントにて
@ginza_motoji
ぎゃらりートーク
奥順株式会社 奥澤順之社長をお招きしお話を伺います
日 時:2月8日(土)10~11時
会 場:銀座もとじ 和織
定 員:40名様(無料・要予約)【受付中】
奥順株式会社 奥澤順之社長 在廊
2月7日(金)~2月9日(日)
全日11時~18時
結城紬とは
Movie:Yuya Shiokawa
鎌倉時代から安土桃山時代にかけ、領主・結城氏が織物の育成に努めたことからその名がついたといわれる結城紬。現在は茨城県結城市を中心に、茨城県から栃木県にまたがる鬼怒川沿いの約20 kmの一帯で作られています。
真綿(繭を煮て引き伸ばし袋状にしたもの)を撚りをかけずに紡いで糸にし、手織りで織り上げる伝統的な技法が守られており、地機で織られたものについては1956年に国の重要無形文化財に指定。また、撚りをかけない糸で作られる布は世界でも珍しく、その技術の文化的価値から2010年にはユネスコ無形文化遺産として登録されました。
糸が空気をたくさん含むためにあたたかく、ふっくらとした手触りと包み込まれるような優しい着心地。
着るほどに肌になじみ、長年かけてのその味わいの変化をじっくりとご堪能いただきたい織物です。