銀座もとじではじめて個展を開かせていただいたのが2005年、それから年月を経て昨年再び会をさせていただくことになりました。その折に大変嬉しい出会いがありました。
私は「海・空・風・光」などを故郷の風景に託して染めることが多いのですが、その御方は私の海の色ブルーが好きですと御母上様共々、帯をお買い求めくださいました。その後、ご丁寧なお手紙を頂戴いたしました。
彼女にとって丁度仕事の節目にあたり、新たな気持ちでリセットの時、一人旅で出会った明け方の海の色のことや今やりたいことに気付いたことなど、率直に綴られてありました。
その中で私の帯のことを「私が私に戻れる帯」と書いてくださっており。はっと心を打たれ、作り手の私に力を与えてくれる忘れられない言葉になりました。
令和2年4月19日
荒木節子
荒木節子さんのご紹介
和歌山県新宮市生まれ。立教大学文学部卒業後、カメラマンのアシスタントとして13年間従事する。ものを生み出す多才な人々との出会いを通じ、ものづくりに対しての姿勢に触発され自己表現の道を決め、絞染め作家・安藤宏子氏に3年、大塚テキスタイル専門学校で染めと織りを3年学びます。シルクスクリーンからはじまり、今では刷毛、箆、櫛、タックフィルム等を使用しながらフリーハンド、手捺染で独創的な作品を創り上げています。
主に、風、光、海、折々に触れてきた風景を心に映し、重なり合う色とかたちで染め上げています。一刻一刻、変化していく中での連続性は一本の帯の中で果てしなく広がっていく風景となり、貴女を包む帯となります。
銀座もとじ和染 2005年 初個展、2019年 開催