泉二さんとプラチナボーイ
京都では、月初めに染織関係の催事が開かれることもあって、泉二さんにお目にかかる機会が多くなった。
いつも端然とした和服姿で、自らハンドルを握ってご来訪いただくので恐縮するばかりである。京都の入り込んだ街中に点在する商社や工房を廻り、品物の選別や物づくりの現場の様子を自身の眼で確かめる、それが経験に培われた泉二さんの信条である。
ある日、突然プラチナボーイが話題となり、何の話かと不思議に思った。きものや帯の素材である絹糸は、繭から製糸、染色、整経などの工程を経て織物になるが、その技術は、太古の昔から多くの工人によって工夫改良が重ねられ、現代に繋がっている。
泉二さんは常にオリジナリティを求め、物の良し悪しは素材で決まるという信念のもとに探究し、巡り合った究極の素材、それが雄蚕から生成されるプラチナボーイなのである。
プラチナボーイを素材にした制作が、産地や作家の手によって進められているという。
今日も銀座もとじさんでは、店内のメインテーブルに着物や反物が拡げられ、友禅の訪問着を試着する人も居て、お客様と作り手との会話が弾んでいることだろう。
奄美大島と東京銀座、大島紬とプラチナボーイ、その間の道程に、泉二さんの語りつくせない御苦労があったと思う。
令和2年6月17日
北村武資
2017年トーク会にて、左から店主・泉二、北村武資さん、外舘和子さん
240周年記念作品 袋帯 「煌彩錦 笹 」
北村武資さんのご紹介
1935年、生まれ。御父上を早くに亡くし、遠戚が働く西陣へ15歳の時に織物の見習い工として従事、機織り職人たちの機を拵えることから‟織の道“がはじまりました。
常に機に向き合い、経糸と緯糸が織り成す織物の在り方を歴史を遡り根源から探究し、現代に生きる織物として創造しています。
1995年「羅」の技法において、2000年には「経錦」の技法において重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。
氏の革新的精神で織りを極めた威風堂々たる織物は、然るべき色彩で生命力と確かな存在感を宿し、今に生きる私たちを魅了し続けます。
銀座もとじ和織 2004年初個展、以後2009年、2012年、2014年、2017年 開催
2015年 35周年記念展 特別出品
2018年 現代の名工展 特別出品
2020年 40周年記念展 特別出品
1935年 京都市生まれ
1965年 日本伝統工芸染織展 日本工芸会会長賞受賞 以後、入選・受賞多数
1968年 日本伝統工芸展 NHK会長賞受賞
1990年 京都府無形文化財保持者に認定される
MOA美術館 岡田茂吉賞工芸部門大賞受賞
1995年 重要無形文化財「羅」保持者に認定される
1996年 紫綬褒章受賞
2000年「経錦」の技法にて二度目の重要無形文化財保持者に認定される
2001年 群馬県立近代美術館「人間国宝北村武資-織の美-」展を開催
2005年 旭日中綬章受賞
2011年 京都国立近代美術館「織」を極める 人間国宝 北村武資展を開催
和織物語はこちら
織の構造美を創造する 北村武資の世界 – 北村武資
深遠なる空間の美―北村武資の織
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人間国宝・北村武資氏を迎えて