見応えある紅葉が美しい11月下旬、自然豊かな中に構えられた松原さんの工房を訪れると、山々を背景に望む広い庭には、真夜中にモグラたちが、やんちゃに遊びまわった穴の跡が、あちこちに残っていました。いのししや鹿も姿を表すという自然の中で、澄んだ水とたっぷりの太陽の光を受けながら、「長板中形」の作品は生まれます。
浴衣の代名詞、「長板中形(ながいたちゅうがた)」
「長板中形(ながいたちゅうがた)」とは、江戸時代の寛文年間(1655~1672)のころより現代に伝わる「浴衣」の代名詞。6mほどの細長い板に生地を乗せ、「型紙」を用いて柄に合わせて糊を置き、本藍で染めていく、熟練の技を要する伝統工芸として、今日に受け継がれています。現代においては、上質で通好みな夏のきものとして、浴衣そして単衣としても楽しまれています。
銀座もとじでは、<素材から>こだわったものづくりを目指しています。作り手の方々にとっては、はじめての糸、はじめての生地となることもあり、より作り手の技の良さが素材の中に活きる作品となるよう、細部に渡りご相談しながら作品づくりに取り組んでいただいています。
作品づくりの生命線、「型紙」
「長板中形」作品になくてはならない「型紙」。和紙3枚を柿渋で貼り合わせて、天日乾燥・燻煙を繰り返して作られることで、「紙」という概念を超えた、水に強く彫りやすい材質となり、そこにさまざまな精緻な絵柄が彫り上げられます。
前回の展示会においても、プラチナボーイの絹布に染めていただいた松原さん、プラチナボーイの優れた性質を捉えられ、その良さに適した「型紙」の絵柄をお考えくださっていました。
「プラチナボーイは、しっとりとした本当にいい生地です。絹に必要なある程度の重みがあり、織り目正しく、体により添うように馴染みます。また、とても品があり、質の良さが際立つ生地だと、わたしは思います。