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2013年4月25日 厳選の型紙にて制作いただいた、長板中形の男&女新作が届きました。 いよいよ2013年5月9日より、銀座もとじにて3度目となる長板中形の藍型染作家 松原伸生さんの個展が開催されます。江戸時代から続く技法を受け継ぐ松原伸生さんの、表裏、両面型付けによる長板中形の藍と白のコントラストの美しさが見所です。
長板中形の松原家
昭和40年生まれの松原伸生さんは、東京都江戸川区生まれ。祖父は、長板中形の人間国宝、松原定吉さん。その息子たちは、「松原四兄弟」と呼ばれてご活躍されてきました。その四兄弟のひとり、松原利男さんの息子が伸生さんです。松原伸生さんもまた、日本工芸会正会員に認定され、数々の染織展で受賞を重ねられています。
松原伸生さんは、高校卒業後、父・松原利男さん53歳の時、一家で水と空気と静けさを求めて現在工房のある君津市に移り住みました。母屋では親子、仕事場では師弟関係、口答での伝授は無く全て結果から学べという厳しい父親のもと長板中形の基礎を学びました。今は陽光降り注ぐ、緑深い人里離れた工房で一人ものづくりをしています。
藍と白の明快な対比の美しさが『長板中形』の魅力
『長板中形』とは、江戸時代より続く型染技法のひとつ。約6.5メートルの長いモミの一枚板の上に生地を張り付けて、渋紙の型紙を置いて防染糊を"両面"に引いていきます。それを天日に干して、生地に豆汁を引き、乾いたら、藍甕で浸染をします。 『両面に防染糊を引く』というのが大きな特徴で、まず表面に引くときには生糊(きのり:自然色は生成り色)に赤色をつけたもので引き、乾いた後、裏面に引くときにはその赤い色彩を頼りに、ぴったりと同じ場所に型を乗せていきます。
両面の同じ場所に糊を置いて藍甕で染める『長板中形』は、表裏ともに同じ柄になるので、白い部分が本当にくっきりときれいに浮かび上がるのです。(片面だけ糊置きをすると、裏面は全面藍色に染まり、白の背景に強く藍色を感じる色になります。)この、藍と白の明快な対比の美しさが『長板中形』の魅力です。
「この静けさの中で出会った人・出会う人のことを思うことが何よりも自分にとって大切です。時が経つにつれ自分の心の中でその思いが膨らみ、人を包むかたちとなり、それを身に纏ってくださる人へ繋がっていく、本当に幸せな仕事です」と松原伸生さんは語ります。
ものづくりと真正面から向き合い生み出された作品からは、温もりある懐かしさと揺ぎ無い潔さを感じます。
選んだ型紙にて染めていただいた新作
昨年の秋、千葉県君津市の松原伸生さんの工房を訪れ、今回の催事に向けて、プラチナボーイやもとじ綿にお作りいただく型紙を選んでまいりました。その型紙によって、仕上がった「プラチナボーイ壺糊縮緬」および「もとじ綿」の白生地に染めていただいた作品が、届いて参りました。 前回のものづくりレポートでご紹介させていただきました、蔦のお柄の型紙は、こちら、プラチナボーイの壺糊縮緬の生地に染め上がりました。
「プラチナボーイ 壺糊縮緬」に制作いただいた、女性もの、長板中形 藍染「蔦(ツタ)」 これまでの長板中形作品には無い、プラチナボーイならではの白場の見事さ、生地の質感が透明感を持って、その白場に表れ、藍で染まった部分の蔦の表情が大変躍動感があって、活き活きと染まり上がっております。これだけ細い曲線で構成された意匠が型紙となり、その型紙によって、両面糊置きがされて藍で染め上げられるという、職人技を極めたようなひと品、作品の力と松原さんの込めた思いが漲って、見る者の心に迫ってくるようです。
「もとじ綿」に制作いただいた、男性もの(広巾) 長板中形 藍染「幾何格子」 また、こちらは、極細の木綿糸を使用して、綿用の機ではなく、絹用の機で織り上げた、銀座もとじオリジナルの綿布「もとじ綿」にお染めいただいた究極のひと品。大変粋なデザインの幾何格子の型紙。たてによこに、縞のようにも見え、アーモンドのような型の中に長方形を配し、その中を十字が横切る格子柄は、大変粋さのあるお洒落なデザインです。うっすらと生成りがかった綿素材の優しい地色が活き、これまでの長板中形と一味違った藍とのコントラストの染め上がりが、大変魅力的です。 その他、選んだ型紙と仕上がった作品を下記にご紹介しています。 瑞々しい感性が光る、松原伸生さんならではの藍染めの美しさを是非この機会にご堪能ください。
「流水松葉」と題した、清々しい水音が聴こえてくるかのような長板中形作品、男女に。
番傘を上から眺めたような景色を型紙にして染め上げた粋でお洒落な作品。男女に。長板中形 藍染「傘文」
銀座もとじプロデュースの【もとじ綿】に染め上げられた綿きもの、「変わり菱」、男女に。