能楽でいえば、揚幕の上がった舞台に橋掛かりの花道を通って広がる、夢かうつつか境目の無い物語の世界が、色彩をまとい、縞模様の布となって、繰り広げられていくようだ。築城さんにとってのインスピレーションの源は、限りなくある。
小倉織・築城則子~縞を彩り、音色を響かせる、築城則子さんのものづくりの源泉に出会う~
2015年6月4日から開催予定の「縞が奏でる音色 築城則子の小倉織」展。多彩で深淵な世界が込められた、築城則子さんの小倉織(こくらおり)。幻想的な物語を響かせてくれる、築城則子さんの「縞」の世界の秘密を探り、作品の魅力を紐解きます。
「風姿花伝」(ふうしかでん)という風雅な名前の書物がある。
室町時代に能を大成した世阿弥が、能の指導書としてかき上げ、通称「花伝書」といわれる。能楽の聖典として知られるが、芸術表現論としても今日に読み継がれている名著である。築城則子さんにとっても、この本は、表現者として、ものづくりに携わる者にとっても学ぶことが多く、また女性の人生についても多くの示唆があり、折々に読み返すたびに新しい学びがあるそうだ。
能の舞台の上の世界、いつも立ち返る世阿弥の花伝書の世界、非日常への憧れ、それらは皮膚感覚として常にあり、すべてそこからスタートしているという。現実世界の物語だけではない、人の脳に立ち現れるあらゆる想像の世界も神秘的な事象の起きる不思議も、誰も制限することはできずに無限であるように、築城則子さんの小倉織の縞の世界も無限性に満ちていて、終わりがない。
能舞台には、囃子方の音楽もあり、例えば、突然鳴るヒューという高い笛の音ひとつも、イメージとなって、色に、縞にしたい、とひらめくことがあるそうだ。
それと同時に築城則子さんはこう言葉にする。
「自然界は色々なことを教えてくれる。」
雨が降っているときに、緑だったりグレーだったり黒だったりとそこに色を感じるし、その時々によって、抱く色のイメージは違ってくるという。築城さんにとって、自然界から得られるインスピレーションも無限のようだ。
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