周囲48キロの小さな島、久米島。 この島には織子さん達が思いを込めて織り成す 「久米島紬」がある。
久米島紬の伝統
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久米島紬の6つの特徴
1.全工程を一人で成し遂げる
久米島紬の織子さん達は図案作りから仕上げのきぬた打ちまで一人で行います。まず図案を描き、色を決めます。そして自ら山に入って染の原料となる植物を採取します。 採取した植物は砕いてチップ状にして、何時間も掛けて自宅で煮詰めます。寝ている時間以外は総てこの煮出す作業に費やします。染料となる煮汁の濃度は自らの経験が頼りです。失敗は許されないので目が離せません。 次に糸を括り、絣を作ります。ビニールと木綿の糸を使って図面のとおりに丹念に括っていく作業は、根気のいる仕事です。また、力を均等に入れて括らなければ染料が染み込んでしまい綺麗な仕上がりにならないため、指先に力を込めます。絣括りを始めると、どんなに熟練した人でも、すぐに指先が木綿糸で切れ血がにじんで来るのです。それでも織子さん達は、指にバンソウコウを貼って絣を括り続けるのです。 絣括りが終わると糸の染めに入ります。これも植物相手の仕事で、気温や湿度にも左右されるので、織子さんの熟練度合いがはっきり出る作業です。染め上がった糸は、機に掛られ織られていきます。2.地色も絣糸も総て草木染め
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3.久米島紬独特の「銀ネズ色のユウナ染」
久米島紬の中で銀ネズ色の紬をご覧になった事がありますか?あの綺麗な銀ネズ色は、久米島で取れるユウナの幹を使います。まずユウナの幹を15~20センチの輪切りにし、それを焼いて木炭化させます。その後ミキサーにかけて粉々に砕き、水に溶かして豆汁を入れ、目の細かい布でろ過して染液とします。粒子が細かければ細かいほど染着力が良くなり、水洗いが楽に行えます。 このように細部にわたって手を掛けて作られるユウナの涼しげな銀ネズ色は、久米島紬の大きな特徴のひとつです。4.絣柄の原点は、日々の生活用具から
尚王朝の時代に「御絵図帖」と言うものが作られました。絣の柄は大体が生活用品の中から作られたもので、当時は「御絵図帖」の指定の絣柄に沿って織られていました。現在も「御絵図帖」は大事に保管され、その柄の組合せで伝統的な絣柄が作られています。5.阿嘉の泥田の泥を使った泥染め
10月~12月の乾燥した時期に阿嘉の田んぼの泥を織子さん達が家に持ち帰り、島の水を使って薄め、ろ過して不純物を取り出した液で泥染めをします。同じ黒でも深みを出そうと思えば、染めては干し、染めては干しの作業を何度も繰り返します。この作業も織子さんが自ら行うのです。6.仕上げは「きぬた打ち」
久米島紬の大きな特徴は「きぬた打ち」です。「きぬた打ち」を行うことによって織物全体の風合いが良くなります。
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シンプルな縞柄の久米島紬
左:椎木染め
右:福木、楊梅、泥染め
品質を守る「鬼の検査員」
「鬼の検査員」と呼ばれている久米島紬の検査員は、総て織子暦20年以上の熟練者です。基準試験に合格し、ひと目で粗悪品を見つける目を持っている人ばかりです。彼女達は、「粗悪品は絶対に島から出さない」「品質は絶対に維持する」「久米島紬の技術は保存する」と言う執念とも言える信条を持って仕事をしています。
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