【河原シンスケ氏 作品コメント】
羽織 大麻布「松竹梅と大兎」
幸運にも我がアトリエの眼前には美しい天橋立が一本線の様に眺められます。 天候によって、それが滲んだ水墨画の濃淡に見えたり、時にはハッキリと松のディテールが見えた。 そんな時、想像の海が頭と眼に広がり、この様な大兎が松に乗っかって、竹梅を眺めている絵を描きたくなりました。前袖のモチーフは、二つの三角形が兎の耳と紋との発想からきています。
丹後独特の織りや撚糸の技術を用いた大麻布の白生地に地染めを施し、河原氏が直接描いた1点ものの羽織。
【河原シンスケ氏 新作展にむけて】
うさぎは世界中、そしてどんな時代にも存在して来た、我々と近い存在。
フランスの16世紀からのオービュッソンのタペストリーにも、日本の平安時代の鳥獣戯画にも。
僕が初めてパリのシャルル・ド・ゴール空港に降りたったのは80年代初頭。その頃はターミナルも一つしかなくフライト数も当然今より格段に少なかった。窓から少し不安な思いでフランスの土地を眺めていると、野原の様な滑走路が波打って見える。だんだん着陸のため近づいて来るそこには、ウサギの大群がぴょんぴょんと跳ねていたのだ。こうして初めてのパリで僕を迎えてくれたのはうさぎ達だったのだ。それ以来、僕の作品のインスピレーションソースには、うさぎが欠かせない存在となった。
出身地では無いが、ご縁があって京都府の丹後地域にアトリエを構えることになり、そこでまた新たに職人さん達との出会いが始まった。自分が出来ない事を出来る人達には、年齢関係なくいつも最大のリスペクト。今回泉二さんからお話を頂いた時、即答したのが、そんな京丹後地域の人達との取り組みだった。僕のうさぎと職人技の出会いで出来上がった作品が気に入って頂ける事を願うばかりだ。
河原シンスケ
河原シンスケ プロフィール
武蔵野美術大学卒。1980年代よりパリ在住のマルチアーティスト。ブリュッセルのELEVEN STEENS での個展のほか、パリ造幣局博物館、パリ工芸美術館、西本願寺伝道院など国内外の数々の展覧会で作品を発表。また、エルメスなど多くの企業とのコラボレーションでも作品を創出。エルメスとのコラボは多岐にわたり、香水『ローズイケバナ』のリミテッドボトルデザインや、エルメスのサスティナブル部門「petit h」での多数のデザイン及び、今年4月、中之島美術館での展覧会のセノグラフィーも手がけた。
Instagram @shinsuke_kawahara