現代根付の第一人者、齋藤美洲さんの根付作品を初めてご紹介いたします。
1943年、東京谷中の象牙彫刻師の家に生まれた美洲さん。上野の美術館や博物館は庭同然で、美術工芸に親しんで育ちました。一番衝撃を受けられたのは、小学五年生の時にできた国立西洋美術館で見たロダンの「考える人」。早い時期から西洋彫刻に魅せられ、大きな影響を受けてこられました。
三代目の父・齋藤昇斎さんの早逝により20歳で4代目当主に。
職人仕事をこなしつつも、よい根付とは何かを模索。当時は根付は輸出品が主流の時代、そこに興った「現代根付運動」。実用工芸の古典根付から、美術工芸としての現代根付へ。現代根付草創期に、東西の彫刻に精通した美洲さんは全く新しい造形の根付を世に出して高い評価を得て、現在まで現代根付の第一線を走り続けています。
留め具として発展した根付は、全方位から鑑賞でき、布をに引っ掛けない形で、紐通しの穴も必須。制約の中で、意匠、造形、技術が三本柱に制作されます。象牙が主材料でしたが、近年は様々な材料が用いられています。
手のひらに納まる小さな世界に秘めた深い躍動感。
根付を美術工芸の域へ引き上げた、齋藤美洲さんの逸品をぜひこの機会にご堪能ください。
齋藤美洲 プロフィール
1943年、東京谷中の象牙彫刻師の家に生まれる。18歳で三代目の父・齋藤昇斎に師事。根付修行に入ると平行して、太平洋美術学校でデッサンと彫塑を学ぶ。1977年より現代根付の研究会を発足、活動し、現代根付の発展と後継者育成に力を注ぐ。1981年の大英博物館作品買い上げをはじめとして、高円宮コレクション、キンゼイコレクションなどに収蔵。国内外で高く評価される現代根付の第一人者。