装いのマナーを基本にしつつ、気候や心地よさを大切に、「単衣仕立てを着る時期」を長く楽しまれる方が増えてきました。 「単衣限定/単衣向きに人気」の素材を集めました。
>>【特集】単衣向きの着物
<織元コメント>
《究極の単衣》「本場結城縮 地機 縞 白ねず×墨」
縞を描く糸と、地となる糸によって構成されるシンプルな縞模様。本品は地糸二本にたいして縞が一本入る最も細い縞の図案。縞というのは糸をそのまま模様として用いることでもあり、結城紬の縞には手つむぎ糸の特徴がよくあらわれている。縮織の場合、生地の表面にシボがたつことで、縞はよりやわらかな線を描く。結城の縞は江戸から明治にかけて流行し、当時は縞を織る産地だった。
製織:小島義晴
「結城縮(ゆうきちぢみ)」は、強撚糸により生地の表面にシボの凹凸をつくることでさらりとした着心地を実現した、単衣仕立てで楽しむ「結城紬の縮織」です。
暑さを感じはじめる季節に「さらっとした着心地」は重要なポイントです。
八丁撚糸機により1メートルあたり2000回転もの撚りをかけた縮用の強撚糸を緯糸に織り込むことで生まれる独特のシャリ感は一度ご体感いただくとやみつきになり、大変希少な結城縮ながら何枚もお持ちになられる織通の方も実は多くいらっしゃいます。
まさに究極の通好みの織物。
結城縮はシンプルな柄行も多く都会的に着こなせます。
気候の変化により単衣を着る季節が広がってきた現代に、大人の洗練された上質なお洒落を楽しむワードローブとしてぜひおすすめしたい着物です。
※「結城縮」につきましてはぜひこちらもお読みください
【和織物語】「極みの単衣 本場結城縮」
「結城縮」について
本場結城縮の魅力
結城といえば暖かい、というのが一般的なイメージですが、本場結城紬 縮織(以下、結城縮)は単衣に最適な織物です。生地の表面にシボとよばれる凹凸をつくることで、さらりとした着心地を実現しています。
通常の結城紬(縮織と区別して平織とよばれます)は、着たときに生地がすべらず、着崩れがしにくいという特長がある反面、単衣に仕立てると裾捌きがあまりよくありません。結城縮では、そこに「シボ」を加えることで、生地の間に空気を通し、裾捌きがしやすく、肌離れのよい着物になります。
結城には単衣でこそ味わえる魅力があります。最大の魅力はその「軽さ」です。通常の結城紬を着たことがある方でも、結城縮を裏地をつけずに単衣で着れば、その軽さに驚かれると思います。
またあまり語られることはありませんが「静かである」ということも魅力のひとつだと思います。結城縮を着たときに気づくのは、きぬずれの音がしないことです。もちろん、きぬずれの音の魅力もありますが、動作をするときに着物が音を立てないことは、結城縮の軽さをより一層際立たせてくれるのです。
「結城縮のつくり方」について
それでは、どのようにして生地の表面にシボをつくるのでしょう。
結城縮と、通常の結城紬は、基本的なつくり方は共通しています。糸つむぎ、絣つくり、機織などは、どちらも同じ技術を用います。
結城縮をつくるのに必要なのは「緯糸に強い撚りをかける」という技術です。強く撚りをかけた糸は縮む力をもつため、織り上がった反物を湯に通すと表面にシボとよばれる凹凸が生まれます。
難しいのは結城では手でつむいだ糸を用いるため、撚りをかけると糸の細い部分に回転が集中し、切れやすいことです。縮の緯糸には1メートルあたり2000回転の撚りが必要なため、八丁撚糸機という道具を使い、水をかけながら撚っていきます。使用する糸も、できるだけ平らな(まっすぐにつむがれた良質な)糸を選ぶ必要があります。
右撚り、左撚りの二種類の緯糸を交互に織り込み、織り上がった反物を一度湯に通して巾を縮め、シボを立てることで結城縮の風合いが生まれます。このとき縮ませる寸法を想定して、機にかけるときは一寸以上も広く織ります。
本場結城縮の歴史
実は明治から昭和初期まで、結城紬といえば縮織のことというくらい、盛んに織られていました。当時は産地の生産量の八割以上を占めていたといいます。それよりも前、江戸時代には結城紬は男性の着物で、縞を中心に織られていました。明治に入り、女性のお洒落着として人気を得ていたのが結城縮だったのです。
ところが昭和31年、平織の本場結城紬が重要無形文化財に指定されると、産地の生産は一気に平織に傾き、縮織は「幻の結城紬」といわれる程、生産が落ち込みます。それと合わせて糸に撚りをかける技術も廃れていってしまいます。
昨今、温暖化の影響もあって単衣を着る時期が広がり、結城縮がふたたび注目を集めるようになりました。糸を撚ることのできる、産地でもわずか数人の職人に依頼し、少しずつですが生産されている大変希少な織物です。